安倍政権の“筋書き”にトランプが乗っかった!

米トランプ大統領アジア歴訪の勝者がいるとすれば、トランプ大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩氏でもなく、日本の安倍晋三首相だ。

アジア歴訪中の米トランプ大統領(左)と笑顔を見せる安倍首相。(時事通信フォト=写真)

ワシントンDCでは元来アジア太平洋地域への関心は低く、トランプ大統領の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)撤退に象徴されるように同地域への積極的関与に及び腰の傾向がある。トランプ大統領を支える共和党関係者の伝統的な外交・安全保障上の関心順位は中東とロシアが高く、前任の民主党政権のオバマ大統領はアジア回帰を打ち出したが、実質的には手を抜いてきた経緯があり、米国の政治でメインテーマになることは少なかった。

トランプ政権内でもマシュー・ポッティンジャー国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長、ウィリアム・ハガティ駐日大使、テリー・ブランスタド駐中大使などの東アジア地域に縁を持つ個別の人事はあったが、国務省・国防総省全体の戦略を描く要職は指名されてこなかった。これには共和党系のアジア太平洋地域に関する外交・安全保障上の専門家の多くが2016年大統領選挙期間中にヒラリー・クリントン氏への投票を促す反トランプ署名に関与したことによる政治的摩擦の存在がある。そのため、トランプ大統領によるアジア・太平洋地域、特に対中政策に関係する政治任用職の指名は最近までほぼ進展を見せてこなかった。

しかし、北朝鮮の浅慮な挑発行為は米国の関心をいやでも東アジア地域に引っ張り、特に北朝鮮問題に対しての協力を骨抜きにしてきた中国が米国の外交・安全保障上の脅威であることが認識されるようになってきた。その結果として、米国の対中強硬派の一部識者の間で強く主張されてきたサイバーセキュリティや知的財産権問題の範囲だけではなく、多くの米国政治関係者間で中国の国家戦略そのものへの脅威認識が急速に高まってきた。