理由のひとつは一粒種のバロン君(11)への愛情でしょう。周りを「敵」に囲まれている中で唯一血のつながった息子です。将来、他の兄弟姉妹に伍(ご)して「トランプ帝国」の総帥になるかもしれません。そのためにも正妻の座は守りたいのかもしれません。

いずれにせよ、「外国人」のメラニアさんの深層心理は誰にもわかりません。彼女が何を考えているのか。いつの日か出るかもしれない回顧録を待つほかありません。

「私は大統領夫人には似つかわしくない」

それだけにメラニアさんの深層心理をえぐり出したような「Vanity Fair」の記事は注目されました。夫人の知人の何人かから得た情報を基にメラニアさんの本心を暴いたからです。

記事の趣旨は、一言でいうと、こうです。

‘She didn’t want this’: ‘Unsuited, unprepared’ Melania Trump still ambivalent about being first lady.(彼女はそれを望んでいなかった。似つかわしくないし、準備もできていないし。メラニア・トランプは今でもファーストレディであることに相反する感情を抱いている)

取材に応じた知人の一人、パロロ・ザムポリというモデル斡旋代理人(実はメラニア夫人をトランプ氏に紹介した人物です)などはこう述べています。

「彼女は大統領夫人なんかには絶対なりたくないと思っていた。夫が大統領候補になったことでプライベートなことが暴露されるのも嫌がった」

政権発足100日目にやっとホワイトハウスへ

メラニアさんが「ファーストレディ」にはなりたくなかったことを示す「傍証」はこれまでにもありました。

当初は、夫が移り住んだホワイトハウスには住まず、マンハッタンのトランプタワーで別居生活を続けました。ニューヨーク小学校に通う息子のバロン君に転校させたくないからだ、というのが理由とされていました。

ホワイトハウスに引っ越したのはトランプ政権発足から100日目。それまでは「ファーストレディ」としての仕事は、義理の娘の「ファーストドーター」のイバンカさんにまかせっきりでした。「仮面夫婦」説から「インサイド・ベルトウェイ(※)恐怖症」説までささやかれました。

※首都ワシントンの環状線内の政官界やマスメディアが織りなすワシントン社交界や文化を指す。

その点では、「Vanity Fair」の記事は、こうした臆測をずばり「立証」したものでした。