そのうえで「自殺サイト」とSNSの違いを、こう説明する。

「当事者が直接メッセージをやりとりするSNSのツイッターやLINE(ライン)は、人の目が届きにくい。SNSは、現代社会の便利な情報交換の手段かもしれない。だが、悪意を持った加害者が、匿名性を盾にしたまま被害者の懐に入りやすいという怖さも併せ持つことを忘れてはならない」 

事件の奥に隠れた問題点を突き止めろ

毎日社説は「男は、殺害した8人の女性に10代が含まれていたとも供述している」という点に触れながら、最後にこうまとめている。

「警察庁によると、SNSを通じて犯罪被害に遭った子どもは昨年、1736人に及び、増加傾向だ。SNSの利用について、家庭や学校での適切な管理や啓発が急務だ。事件の衝撃性だけに目を奪われることなく、早急に社会全体で防護策を考えたい」

確かに事件の衝撃性が強いと、ついそこに目が向いてしまう。毎日社説が主張するように社会全体で対策を練ることが求められる。

類似する事件との共通点を洗い出し、事件の奥に隠れた問題点を突き止める。再発防止のためには、そうした対策が重要である。

事件の全体像を浮かび上がらせるには、警察の捜査だけでは不可能だろう。容疑者を取り調べるだけでなく、事件をとりまく環境全体に目を配らなければいけない。心理学者、社会学者、精神医学の専門家らの協力が欠かせない。国がまとめ役となる必要がある。

閉鎖に追い込んだ自殺サイトの代用品

産経社説は「金銭と乱暴目的だったと動機を話す男の異常性ばかりが際立つが、それでいいのか」と指摘し、「逮捕のきっかけとなった行方不明の女性はツイッターに『自殺願望 死にたいけど1人だと怖い』『一緒に死んでくれる方がいたらDM(ダイレクトメッセージ)をください』と書き込んでいた」と殺された女性の言葉を具体的に書いている。

さらに毎日社説と同様に「自殺サイト」の実態に触れた後、こう独自の見解を示す。

「だが、ツイッターやラインにより利用者が直接情報をやり取りすれば、監視の目は行き届かない。一方で、『自殺募集』などの語句で検索すれば、多くの投稿を容易に見つけることができる。閉鎖に追い込んだ自殺サイトの代用品となっているのが現実だ」

事業者の監視の強化で自殺サイトは閉鎖に追い込まれた。ところがその代用品としてツイッターやラインといったSNSが使われているというわけだ。