自分を「DV夫」にでっち上げ、離婚成立を画策する妻

妻子と一緒に暮らせるように家裁に調停を申請した後、予期せぬ事態が発生した。

妻から離婚したいという申し出があったのだ。高木さんはもちろん拒否したが、妻は離婚を求める理由を分厚い資料にまとめ、裁判所に提出した。

そのなかに、高木さんのDV(ドメスティック・バイオレンス)が訴えられていた。高木さんは妻子に手をあげたことはないという。しかしDVは、殴る、蹴るといった物理的な暴力とは限らない。例えば「自分が仕事で使っているパソコンのハードディスクが壊れたのは、夫の暴力が原因」と身に覚えのないことが書かれていた。しかも「地元の区役所と警察署にハードディスクの件でDVを訴え出て認定された」とも記載されていた。

驚いた高木さんが、あとで弁護士と一緒に区役所と警察署で確認すると、そのような事実はなかった。いわゆる、DVの“でっち上げ”である。

「もちろん裁判官には、『その陳述書はウソだらけだ』と主張しました。『区役所と警察署で確認した』とも言いました。それでも聞き入れてもらえないのです」

▼裁判所「陳述書が事実かどうか調べる時間はない」

途方にくれた高木さんは、裁判官に「どうして私の話をちゃんと聞いてくれないんですか?」と尋ねた。ところが、裁判官は平然とした顔で「陳述書の記述が事実かどうかを調べる時間は裁判所にない」と正直に答えた。

「これが司法の現実なんだと思い知らされました。どうせ裁判所は調査しないとわかっているから(妻は)嘘八百を並べ立てる。進め方の手順はすべて決まっているんです」

そうした常軌を逸した妻の言動を、高木さんは信じることができなかった。ほんの少し前までは、生活を共にしていた妻がそんなことをするとはとても思えない。DVのでっち上げなどは、妻の弁護士の入れ知恵なのではないかと高木さんは疑心暗鬼になっている。

妻子と別れて暮らすようになって5年以上が経過した。離婚はまだ成立していない。月1回の面会で子供たちの成長は見守ってきたが、元のように家族で一緒に暮らすことを諦めたわけではない。高木さんの戦いと「月12万円」の支払いはまだ続く。

▼法律を知らないと、どんなリスクがあるのか

雑誌『PRESIDENT』(2017.10.16号)の特集は「ヤバすぎる『法律』の常識」。本記事の子供連れ去りのケース以外に、「満員電車で女性に近づいた人」「老親の世話を兄弟にまかせっきりだった人」などのエピソードを弁護士や専門家が解説しています。ぜひご覧ください。

 
(法律監修=上野晃(弁護士))
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