勝手に子供を連れ戻したら未成年者略取誘拐罪で逮捕

高木さんは、妻の不満を聞くことができる人が必要だと考え、民間のカウンセラーに相談した。後日、妻がカウンセリングを受けに行く段取りだったが、妻はその前に子供を連れて出て行ってしまったのだ。

雑誌『PRESIDENT』(2017.10.16号)。法律特集の目玉企画は「マンがで学ぶ法律に弱い人の末路」。本記事で紹介した子供連れ去りに加え、痴漢、パワハラ、冤罪、相続などについて解説している。

高木さんの場合、「子供連れ去り」にはあったが、小学校や保育園で子供たちに会うことはできた。子供を連れ去られた親が、学校や保育園に子供との接触を妨害されるケースは多い。連れ去った側の親が「子供と接触させないように」と頼み、なかには110番通報するように求めることもある。

「子供たちにすぐ会えただけでも、私は幸運でした。連れ去られたまま何年も会えない人たちもいます」

離婚前であれば、親権は夫婦の両方にある。しかし、親権があるからといって、連れ去られた側が勝手に子供を連れ戻すことはできない。

もし連れ去られた側が、勝手に子供を連れ戻したら、未成年者略取誘拐罪(刑法224条)に問われて逮捕拘留される恐れもある。

▼親権は自分にもあるのに自由に会えない不条理

夫婦が離婚した場合は、親権がない側が子供に会うためには、家庭裁判所に<面会交流>の申し立てを出すことになる。

離婚成立前の「子供連れ去り」でも、面会交流の申し立てによって子供に会うことはできる。しかし、連れ去った側の親が面会交流に強く抵抗する場合、長期間、子供と会えないこともまれではない。その間に、子供の記憶が薄れ、さらには同居親の影響もあって、やがて「会いたくない」と言い出すこともある。そうなると子供と会うことすら困難になってしまう。不幸中の幸いと言うべきか、高木さんの場合、面会交流は認められた。しかし、わずかに月に1度であった。

「親権はあっても、自由に会うことが許されません。こんな不条理なことがあるとは、当事者になるまで知りませんでした」

高木さんは、妻子と一緒に暮らせるように家庭裁判所に調停を申し立てた。