"ながらスマホ"の親はどのように子供の芽を摘んでいるか?
編集担当者として川島教授の話を聞きながら、私はあることを思い出した。
学生時代に、心理療法の一つとしてカウンセリングを習った時のことだ。カウンセリングでは、悩みを抱える話し手に対して聞き手はアドバイスをしたりせず、途中、相手の言ったことを繰り返したり、相槌を打ったりしながら、ただひたすら話を聞く。それで果たして悩みが解決するのだろうか? と感じられるのだが実践してみると確かにしっかり聞くことができると、話し手が話す内容はどんどん前向きになっていった。
人は、話をしっかり聞いてもらえると、自分を受け入れてもらえたと安心する。すると、自ら悩みを解決できるようになっていく。人にはもともと自分で課題を解決したり、成長する力が備わっているのだ。ただし、その力を発揮するには、誰かに全面的に受け入れてもらうことが必要だということなのだろう。
学力についても、きっと同じなのだと思う。
話をしっかり聞いてもらえた子は、学力が上がるという真実。これは子供には本来、高い学習意欲が備わっていることを示している。子供が小さかった時のことを思い出せば、納得できる。なんにでも目を輝かせ、失敗しても挑戦する。これが子供の本質だ。本来備わっている力が発揮されていないということは、受け止めてくれる存在がいなくて不安なのかもしれない。
おどかそうというわけではない。親は何も難しいことをしなくて大丈夫なのだ。ただ、話を聞いてあげればいい。あなたが楽しそうに話を聞いてあげるだけで、子供は満たされた気持ちになるのではないか。
▼忙しい忙しいと言いながら、スマホでゲームやLINEする親
さて皆さんは子供の話をしっかり聞いているだろうか?
私はこの取材のあと、自分を振り返って反省した。普段の子供との会話を思い出すと、仕事から帰ってきて、あわただしく料理しながら、掃除しながら、スマホでメールチェックしながら……という「ながら聞き」が基本で、適当に相槌してしまうことも多かった。
川島教授は「スマホの登場が家族の時間を奪っています。共働きが増えて、お母さんは確かに忙しいのですが、そのなかにスマホを眺めている時間が組み込まれていたりします。子供に向き合う時間にしてほしいです」と話す。本当に耳が痛かった。そして、おそろしくなった。スマホは大人にとって、多忙な毎日の中でのオアシスだ。リラックスできる「ひとり時間」だ。しかし、「ながらスマホ」はわが子の人生をダメにしてしまうリスクもある。そのことを肝に銘じたい。
今回の東大生アンケート記事では、東大生の親が日常生活の忙しいなか、「自宅のどんな場所で」また「どんなタイミングで」子供の話を聞いてあげたかなどについても質問している。また、「最低限どのくらいの時間をかけて会話をすべきか」を川島教授にも伺っているいる。さらに、東大生のような「高い学力」に結び付けるための大切な条件も紹介している。どれも難しくない。やろうと思えば、誰でもすぐできる。ぜひ、参考にしてほしい。
*東大生アンケートでは、小学生時代、自分の親がどのようにして「子供の話を聞く工夫」をしていたかも解析。「いつ」「どこで」「どのように」耳を傾けたのかといった東大生の具体的な証言は発売中の『プレジデントFamily2017秋号』をお読みください。