ヤル気を引き出す「神オヤジ」と子供をツブす「ダメおやぢ」
私事で恐縮であるが、先頃「中学受験 わが子を合格させる父親道 ヤル気を引き出す『神オヤジ』と子どもをツブす『ダメおやぢ』」(ダイヤモンド社)という本を上梓させて頂いた。
「中学受験」と銘打ってはいるが、要はお父さん用の「わが子の思春期取り扱い説明書」である。
長い間、私は子育て系の取材をさせて頂いているが、同じようなバックボーンにもかかわらず、お子さんがうまく育っているなぁというご家庭とこれはちょっと大変だなぁと思うご家庭とがあって、その理由を探っている。
先日、掲載させて頂いた「子供の目が死ぬハイジャック母」http://president.jp/articles/-/18510)で挙げたように、子育てにおける母親の影響力は凄まじいものがあるのだが、当然、父親も無関係ではない。
今回はどういうタイプの父親が子供を潰し、また逆にどうすれば子供を伸ばしていけるのかにスポットを当ててみたい。
「父親道」の本の中でも語っていることだが、今のお父さんは気の毒なくらい迷走している人が多い。例えば、塾ではこんな「迷走おやぢ」に遭遇できる。
某難関中学受験大手塾の先生は「年々、塾の保護者会や個別面談・平日の学校説明会も父親の姿が増え、メモ魔、写し魔(撮影禁止が明言されていないとスマホ音がうるさい)、PC魔が増殖しています。さらに最近はブログ・SNSも好きなようで見る人が見ればすぐに誰かが特定できる内容を公開しています」と語る。
別の大手進学塾の先生も手厳しく次のように語るのだ。
「最近父親の参戦が増えています。私個人が接する機会が増えているのは、エクセルおやぢ(注:「父親道」に出てくるわが子の成績をデータ管理するおやぢのこと)、進学実績至上主義おやぢでしょうか。学校を数字でしか見ていない父親は、わが子の成長も身長や体重、偏差値や順位といった数値でしか見られません。こういった親御さんは、最近重視されるようになった、思考力・判断力・表現力や主体性・多様性・協働性という資質・能力や、それらを育むための各校の取り組みを『何の役に立つのか』『受験には無用だ』と切り捨てます」
そして、そんな父親と接したときはこう対処するらしい。
「もっと恐ろしいデータで返すんです。例えば、某難関国立大の卒業生の就職率や3年後離職率とその原因、東大の推薦合格者が評価された実績などなど。すると、しばらく電話がかかってこなくなります。が、次にその父親から電話がかかってきた時には、もっとデータ力がアップしています。まあ、痛い目に遭うまでは変わらないのでしょう」
これは「お手本」がないということが迷走理由のひとつになっている。
今、子育て中のお父さん世代以上の年代では「父になる」ということは特別に意識されてはこなかっただろう。昭和以前の父親はとりあえず「稼ぐ」ことを中心に暮らしていれば、それで良かったのであるが、今は違う。
世の中が、そして何より妻がそれだけでは許さないという圧倒的圧力で迫ってくる。「稼ぐ」ことはこれまでどおり、その上で更に家庭に貢献せよ! と詰め寄るのだ。しかし、モデルもない中、どうして良いやらわからずに、結果、おやぢの迷走暴走になりやすい。
今、父親というものは「父になる」ということを意識しなければなれない「難関資格」になっている。
「子供が伸びない」代表的ダメおやぢを列挙してみよう。