「子どもに成功体験を積ませたい」「挫折感を味わわせたくない」「自分が失敗したことで同じ嫌な思いをさせたくない」……。中学受験に詳しい教育カウンセラーの鳥居りんこさんは、そんな悩みをもつ親の多くは「自分の思いや感情を優先していて、わが子のことを考えていない」と話します。その理由とは――。

「何をすれば頭の良い子に育ちますか?」と問う親

今のお母さんたちは(これはおなかに赤ちゃんがいる時から、子どもが独立するまでの20年超の時間の中にいる母たち全てを指す)本当に大変だよなと思う。

子どもは両親から生まれてくるとはいえ、まだまだこの国では何か事が起こると「母親が悪い」ということになりがちだからだ。もちろん父親も大変だが、多くの母たちは世の中から発せられる重圧感の中で、「この子をちゃんと育てなければ!」と懸命にもがいているように私には映るのである。

最近、私の元に寄せられた質問にこういうものがあった。

「幼児に何を与えれば、または何をすれば頭の良い子に育ちますか?」

その真意を聞いたところ「頭の良い子がほしい」のだそうだ。不安要素満載の未来予想図に負けない手段の選択肢として、これが選ばれたのであろう。

1歳児を持つその若いママは「早期教育」のノウハウが欲しかったのだと思うが、私の「ママがニコニコ笑いながら、赤ちゃんといっぱいお話ししてあげるのが一番」という答えには不満そうにしていた。

(余談だが、超優秀大学へ通う子を持つ母たちへの取材をしたときのこと、わが子が幼児の時にはオノマトペを意識した語りかけをしていたと答えたケースが多かった。例:「雨がしとしと降っているね」)

「心配」で心を満タンにする親

また、別のママは深刻そうな顔で私にこう訴えてきた。

「ウチの子、ネット情報で見ても、他の子たちとは違うみたいなんです。夜、なかなか寝ないし、我が強いというのか親が食べさせようとしても、頑として自分で食べると言ってきかないんです。これは発達障害だと思うのですが、そうですよね? だとすれば、どういう療育をすれば良いですか?」

これは1歳にもならない赤ちゃんへの心配である。ひとつの不安要素を見つけると、それに関する情報を検索しまくり、勝手に妄想を膨らませ、問題にもなっていない内から「心配」で心を満タンにしている。こうした傾向は、何も母親に限らず、一部の父親にも当てはまる。