文部科学省は5月16日、センター試験にかわって2020年度から始める「大学入試共通テスト」の実施方針案と問題例を公表した。長年、中学受験の指導を行っている矢野耕平氏は、その内容にあぜんとさせられたという。大学受験を控えた中学3年生以下の子を持つ親であれば、「入試改革」の行方が気になるはずだ。だが、矢野氏は「『改革』という言葉の響きに踊らされてはならない」と強調する。その理由とは――。

難関大学に進学できる中高一貫校を選ぶ親

毎年3月、中学受験に携わる塾講師たちはネット上に公開される高校別の大学合格実績を連日チェックする。なぜか? それは大学合格実績、とりわけ「難関大学合格者数」の増減が、来年の入試の難易度を占う重要な指標となるからだ。

たとえば、A中学校が前年比で東京大学合格者数を10名から20名と倍増させたとしよう。ほぼ間違いなく、A中学校は注目の的となり、志望者激増につながり、結果として前年とは比較にならないほどの激戦が入試で繰り広げられることになる。

もちろん、その逆のパターンもある。B中学校の難関大学合格実績が前年比で芳しくない状況であれば、B中学校の志望者は減少し、結果として来年の入試では「入りやすく」なる公算が大きい。

高い授業料を払うなら、合格実績を出している中高一貫校へ

でも、これってよくよく考えればおかしな話である。

子どもが現在小学校6年生であれば、大学受験期を迎えるのは6~7年後だ。直近のその学校の大学合格実績がその子の大学受験結果の浮沈に密接なつながりを持つわけではない。

なぜこのような現象が起きるのだろうか?

それは、多くの受験生を持つ親が「目に見える数値」である大学合格実績を志望校選定の「分かりやすい」材料として重きを置くからだ。つまり、わが子が中学校、高校からどんな教育を授かるのかというその内容以上に、どんなレベルの大学へ進学できるのかが気掛かりなのだ。