エプソンは今年4月、完全子会社化した機械式腕時計で定評のあるオリエント時計を吸収合併しており、腕時計の技術力を強化している。独自ブランドの立ち上げに当たって、「1942年創業以来、磨き続けたウオッチ製造技術」とうたい上げたのは、その自負の現れだろう。
男性人気が高い「ソーラー発電式」
高級腕時計は国産大手3社とスイス勢が激しく争う市場だが、碓井稔社長は「エプソンにしか作れない、エプソンならではの腕時計がある」と実績ゼロというハンデを感じさせない自信をみせる。
独自ブランド「トゥルーム」が目指すのは、アナログウオッチによる最先端技術を極めるブランド。ウリは得意とするセンサー技術と長年培ってきた腕時計技術の融合だ。GPSや気圧、高度、方位など豊富な機能を搭載しているが、数値は液晶ではなくアナログ針で表示する。電池交換不要のソーラー発電式の高機能腕時計は、男性からの人気が高い。
しかし、高級腕時計市場は各社がひしめく激戦地だ。セイコーウオッチは今年3月、最高級のフラッグシップ(旗艦)ブランドに位置付ける「グランドセイコー」の大幅刷新を図った。「セイコーと異なる別の高みを目指す」(服部真二会長)という狙いから、文字盤から「SEIKO」のロゴを外した。「グランドセイコー」を独立したブランドとして育て、スイス勢に真っ向勝負を挑む。
シチズン時計は買収によるマルチブランド戦略を加速させている。08年に米ブローバ、12年にスイスのプロサーホールディング、さらに昨年5月にスイスのフレデリック・コンスタントホールディングを買収。中価格帯が強みの「CITIZEN」ブランドに加え、高価格帯ブランドをそろえることで、幅広い層の取り込みを狙う。販売面では、最大市場の米国でブランドごとの販売会社を統合。日本では今年4月に東京・銀座の松坂屋銀座店跡地にオープンした複合商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」に、主要ブランドをそろえた初のフラッグシップストアを開設した。
訪日中国人の「爆買い」には、もうひと頃の勢いはない。日本時計協会の推計によると、2016年の腕時計(完成品)の市場規模は7867億円で、前年比でマイナス13%となった。ただ、足元の市場は回復基調を取り戻している。2017年4~6月期連結決算で、シチズンの最終利益は前年同期比15%増の26億円。セイコーHDは前年同期12億円の赤字だったが11億円の黒字に転換した。カシオ計算機は時計事業が減収となったものの、腕時計の主力ブランド「Gショック」の新商品投入を夏以降に本格化し、2018年3月期通期での復調を見通す。