「儒教の呪いは中国人・韓国人にDNAのレベルで沁みついている」とし、それを歴史的事実――いかにそれが間違っているか本稿で解説していきたい――に求めながら、拓殖大学の「保守」の身内だけは「後天的に日本に帰化した大和撫子」として良とする。

ならば、その「儒教の呪い」とやらが染みついている本土の中国人・韓国人も後天的に幾らでもその「呪い」とやらを解消できるという理屈になるが、そのような結論にはならない。読んでいてこっちが何かの呪いにかかったような気分になってくる。そんな本である。

儒教の説明はほとんどない

気は進まないが、ここから本書について詳しく評していきたいと思う。本書の要旨は、そのタイトルの通り「儒教」という、ネット右翼にとっては「新概念」をてこに、中国と韓国(さらに北朝鮮)のいわゆる「特定アジア三カ国」(通称、特亜三国)の反日姿勢、嘘つき、事大主義、歴史修正主義(と、著者が言っているもの)の原因を解明しようというものだ。

しかし肝心の「儒教とは何か」という説明はほとんどない。著者によれば、「儒教の呪いによって、自分中心主義=俺様主義、反日的性質、侵略的傾向、うそつき・忘恩の傾向」が彼らに染み付いた。中国と北朝鮮については、その「儒教」に共産主義が付加されたことでさらにその度合いは倍加された、のだそうだ。

では非共産国である韓国についてどう説明するのかといえば、それも儒教に基づく「小中華思想」で、日本を下、中国を上、自国を中国に次ぐナンバー2として位置付ける事大主義が浸潤して今の姿になったのだという。

大間違いの「小中華思想」認識

儒教を苗床として出発した自国中心の世界観=華夷(かい)秩序は、自国の首都から遠ざかれば遠ざかるほど文明度が落ちて、野蛮国が東西南北を取り巻いているというモノになる。これに従えば、中国王朝からみて東にある日本は「東夷(とうい)」で、蔑視の対象となる。まあ、ここまでの説明はおおむねあっている。

だが、韓国に関する記述はまるででたらめだ。「韓国は小中華思想を持っている。これは中国を親、自分を兄、日本を弟という秩序で捉える世界観だ(韓国=中華世界のナンバー2)」というのは、ゼロ年代のネット右翼の古典的な韓国観をトレースしたもので、本書における記述も何ら進歩はない。