「ナイトタイムエコノミー」のお手本はゴールデン街

近年、特に目立つのは日本を訪れる外国人観光客の存在であり、事実、この地域を訪れる観光客のうち6割~7割が外国人であるという。2009年にはフランスの有名観光ガイドブック「ミシュラン日本版観光ガイド」において観光地として二つ星の評価を獲得、一時はゴーストタウン化していた新宿ゴールデン街が文字通り東京随一の夜の繁華街としてまさに奇跡の復活を遂げたのである。

ゴールデン街においてもこのように見られる「陽が落ちた以降から翌朝までに動く消費活動」は、近年、ナイトタイムエコノミーなどとも呼称され、世界的にその振興の重要性が注目されている都市経済分野のひとつだ。

▼ロンドンのナイトタイムエコノミー粗付加価値は最大約4兆円

例えば、イギリスの首都・ロンドンを本拠地とし世界各国で会計、税務、アドバイザリー・サービスを展開する会計監査法人、Ernst & Youngは2014年のロンドンのナイトタイムエコノミーのGVA(Gross Value Added、粗付加価値)はおよそ2兆5665億円~3兆8315億円(177億ポンド~263億ポンド)と推計し、ナイトタイムエコノミーがロンドン市域全体のGVAの約5~8%を占めるとしている。

また、これらを下支えするナイトタイムエコノミーに従事する直接雇用者数は市域全体で72万3000人に達し、ロンドンの全就労者のおよそ1/8を構成しているとされる。これに間接的な雇用創出量までもを含めると、ナイトタイムエコノミーによる創出雇用総数はロンドン市域全体で126万人にも及ぶと推計されており、ロンドンの都市経済を支える貴重な「雇用主産業」となっている。

Ernst & Youngは、ロンドンのナイトタイムエコノミーはいまだ大きな成長余地を残しており、2029年までに市域のナイトタイムエコノミーのGVAがおよそ4兆円(283億ポンド)、直接雇用は2014年の推計値である72万人から2030年までに115万人へと拡大すると予測している。

このような新たな都市経済分野としてのナイトタイムエコノミーの存在は、当然ながら都市政策の中で大きな注目を集めており、世界の多くの国際都市が政策的に振興の対象としている。先述のロンドンでは市役所の中にナイトタイムエコノミーを振興する専門役職者が設けられおり、市域の産業界と連携をとりながら行政が主導してその振興を行っている。同様に、このような専門役職者はロンドンのみならず欧州圏の都市行政において採用が広がっており、ロンドン以外にも、アムステルダム、パリ、チューリッヒ、サンフランシスコなど、多くの国際都市において行政当局の中に定められている。