外国からのお客さんに、どんな料理を出してもてなすべきか? 頭を悩ませた経験がある方もいらっしゃるだろう。

幕末の日本にペリーが来たときには、料亭の懐石料理を出したという資料がある。やはり、そのときの一番「立派な」料理を出して喜ばせたい。そんな発想になるのは当然だ。高価なもの、珍しいものが饗応される。

ところが、もてなされる側は、高価な料理を出されても、必ずしも喜ばない。むしろ、普段食べているものを提供したほうが、おいしいと思ってもらえることも多い。

考えてみれば、私たちが日常で食べているものは、特別なものではなくても、おいしいからこそ、選ばれ、残っているわけである。外国からのお客さんにも、普段の料理を出したほうが喜んでもらえそうだが、つい歓待する側が構えてしまう。

居酒屋などが並ぶ庶民的な界隈にも、外国人観光客の姿が多く見られるようになった。(写真=時事通信フォト)

最近、日本のどこに行っても、外国からの旅行者が多い。東京でも、大阪でも、京都でも、博多でも、そして、よもやこんなところにまで、と思うような地方都市にも、ガイドブックを持った訪問者の姿が見られる。

そして、以前の日本旅行と大きく異なるのは、彼らが、日本人の日常の食べ物を喜んで口にするようになったことだろう。

寿司や天ぷら、すき焼きといった「外国人が喜ぶ日本料理」ではなく、ラーメンやそば、カツ丼、さらにはお好み焼きまで、もはや外国人が口にしない日本料理はないと言ってもよいほどだ。