お好み焼きについては、個人的な思い出がある。英国に留学しているとき、フランス人のオリビエと知り合った。彼を下宿でもてなすことになって、はたと困った。日本料理の材料など、当時のケンブリッジでは手に入らない。

そこで思いついて、お好み焼きにすることにした。小麦粉と卵、それに具があればなんとかなる。問題は、ソース。ロンドンまで行き、値は張ったけれども、オタフクソースと青海苔を手に入れた。

これで準備万端。当日になって、オリビエがやってきた。ビールで乾杯してから、お好み焼きを作ってご馳走した。意外にも好評だった。2回も3回も、オリビエはおかわりした。

そのときに彼が言っていたことが忘れられない。「不思議だ。いくら食べても、もっと食べたくなる」。たしかに、オタフクソースで食べるお好み焼きには、そんな力があるのかもしれない。

美食にうるさいフランス人に、お好み焼きなど食べさせて大丈夫かと危惧したが、むしろ目を輝かせた。最近の外国人の訪日ブームを見ていると、答えはあそこにあったのだなと気付かされる。

思えば、日本はペリー来航をきっかけとした開国以来、外国に対しては、よそ行きの顔をしていたように思う。外国人向けに西洋式のホテルを開業したり、不平等条約を改正するために鹿鳴館を建てたり、とにかく普段と違う自分たちを見せようとしていた。

今、グローバル化の中、世界の人たちが、普段の日本の魅力に気付き始めている。私たちはもう、よそ行きの顔をしなくてもいいのではないか。

リラックスして、普段着のままで、ラーメンやお好み焼きを食べながら外国人と世界経済の話をしていい。そのほうが、むしろ現代風だ。

「ありのままのグローバル化」こそが、これからの日本の道だと私は思う。

(写真=時事通信フォト)
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