聞きたくない話は、むしろ「積極的に聞く」

――夫が、プライドを捨てて頭を下げるにはどうしたらいいんでしょう。

【養老】僕なんて全然問題ないです。好きな虫とりをやってれば非常にハッピー、後は全部譲ってもいい。世の中には奥さんに眉をひそめられてる虫マニアもたくさんいる。そこはお金があるとか家が広いとか、余裕が必要なんです。僕が若い頃は、大学の先生の夫婦喧嘩といえば8割は経済問題。虫を飼うのも「家が狭いのに、邪魔だ」という話になる。僕は、その余裕をつくるため必死で働いているんですよ。働くモチベーションって大事でしょ。

【高橋】おお、モチベーションに!

【養老】今非常に怖いのは、妻がクイーン・ヴィクトリアでクルーズに出るから、僕に一緒に行けって言うんです。船の中に閉じ込められるって、それって、警官と泥棒が一緒にいるみたいでしょう。

【高橋】私は家が仕事場ですから、妻といつも一緒です。冗談でなく、密室で一日26時間くらい話をしている感じで、そこで鍛えられてるところがあります。

【養老】ほう、それはすごいね。

【高橋】最初は、彼女が話しかけてくると「ああ、そう」と聞き流していました。でも、ちゃんと聞いてないのはバレてるわけです。たとえば今日締め切りで入稿しなきゃいけないとなったら「いつまでこの話が続くのかな」と思うじゃないですか。それがバレる。すると、妻はそのまま朝まで話し続けるんです。それでどうしたかというと、「積極的に聞く」ようにしました。「どういうこと? それ、興味ある」みたいな。締め切りがあっても、妻の話を優先する。すると朝までかかっていた話が30分で終わるようになったんです。これはコストがすごく安くつく。

――それは、本当に聞いてるんですか? 聞いてるフリですか?

【高橋】私ぐらいになると、境目がないです(笑)。「一生懸命聞き流す」みたいな。右から左だけど、身を乗り出して、必死に聞いているフリをする。毎日のようにやっていると、何も考えずにできるようになります。