昨今「スポーツビジネス」という言葉をよく耳にするようになった。スポーツビジネスには大きく分けて2つある。ひとつが、スポーツそのものを商材として、スポーツの持つ価値を扱うビジネス。もうひとつが、スポーツそのものを商材として扱っているわけではない企業が、本業の目標達成や課題解決のためにスポーツを活用するビジネスだ。この後者こそが、「スポーツで稼ぐ」をあらわしている。とりわけスポーツのもたらすマーケティング効果に注目し、スポーツスポンサーシップに取り組む企業が急増している。

目的が曖昧なスポンサーシップは不幸

これまで日本では、“支援する”ことやCSRの一環としてスポーツスポンサーシップを捉える傾向が強かった。これは企業にとって“コスト”となっていることを意味し、業績が悪化すれば当然、カットの対象になってしまう。一方、欧米ではスポンサーシップを“投資”と捉えている。企業のブランドイメージの向上や商品のプロモーションなど、マーケティング戦略のひとつとしてスポンサーシップを位置付けている。投資であるからには、その“リターン”を最大化することが求められる。

ワールドワイドに展開するスポーツデータリサーチ会社、ニールセンスポーツの代表取締役社長であり、日本のスポーツスポンサーシップの第一人者である秦英之氏は、スポンサーシップのリターンを最大化する上で最も大事になるのが、目的の明確化だという。

「日本のスポーツ界では、目的が曖昧なままスポンサーシップを始め、なんとなく資金を投入し、結果として何のためにやっていたのか分からないまま終わってしまう、ということがよく見られます。目的が明確でなければ当然、終わった後に評価することもできません。結局、『あまり意味が無かったね』と言って手を引くことになる。スポンサー企業にとってもスポーツ側にとっても不幸な結果だといえるでしょう。残念ながら、日本ではこうした悪い事例が数多くあることは否定できません」

スポンサーシップ5つの目的

秦氏は、スポンサーシップを行う目的は次の5つに分類することができるという。

1.ブランドの認知度やイメージの向上
2.売り上げ
3.ホスピタリティ
4.社会貢献
5.インナーマーケティング(社内に向けた意識改革や社員教育など)

これら5つの目的は、それぞれの企業によって複合的に絡み合い、状況によって常に変化するものだという。秦氏はアメリカの保険関連企業であるエーオン(Aon)を例に説明してくれた。