「自分の根っこにあるバカさを変化させる」方法

そうした「こだわり」を自己分析してみる。そのための方法として、本書は、「自分が何を欲望してきたか」という「欲望年表」をつくることを提案する(著者自身の年表も掲載されている)。

そこから見えてくる自分の「享楽的こだわり」とは、「自分のバカな部分」であるという。この「バカな部分」は、特定の勉強へと踏み出す足がかりになってくれる。同時に、深い勉強をすることで、バカな部分は変化する可能性がある。

<勉強の視野を広げ、自分の享楽を分析しつつ勉強を続けることで、あるバカさが、別のバカさへと変化する。ラディカル・ラーニングは、自分の根っこにあるバカさを変化させる。バカでなくなるのではない。別のしかたでバカになり直すのです>

<これが、本書のサブタイトルで言う「来たるべきバカ」ということです>

ビジネスの世界には、PDCAサイクルというものがあるが、本書の哲学的勉強論は、アイロニー→ユーモア→享楽的こだわり、というサイクルをまわすことだと言えるだろう。

こうした原理論のあとに、勉強を継続するための具体的なテクニックが紹介されている。本の探し方、読書の仕方、エバーノートやアウトライナーを使ったノート術など、著者の経験もまじえた「知的生産の技術」は、サービス精神たっぷりのお役立ちパートだ。

さて、僕は本書もまた『中動態の世界』『観光客の哲学』と並んで、愚かさを増す世界に抵抗するための書として位置づけたい。補論でも触れられているが、本書のいう「深い勉強」とは、自分を縛る環境・統治に抵抗するための勉強でもあるからだ。

さらに本書は、これまで紹介した2冊ともさまざまに共振している。たとえば『中動態の世界』もまた、言語の考察を通じて、自由への道を展望するものだった。『観光客の哲学』とも「偶然性」「有限性」「他者」という主題で通じているし、勉強を観光として捉える見方もできるかもしれない。

3冊いずれも、哲学・思想に関心のない読者でも十分読み通せる。そしてビジネス書や自己啓発書では味わうことのできない、深い思索、深い勉強へといざなってくれる。「春の哲学書3冊」はセット読みがオススメだ。

というわけで番外編はこれにて終了。次回からはまた平常運転に戻ることにしよう。

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