遺産分割は申告期限より前に

遺産分割が協議でまとまらない場合、家庭裁判所に調停や審判の申し立てを行うことになる。調停では、相続財産に関する資料、相続人への聴取にもとづき、調停委員会が解決のために助言を行い、決着を図る。調停不成立の場合は、自動的に審判手続きに入り、家事審判官が各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、遺産分割について審判を行う。

相続税申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月が申告期限となっている(期限日が土日祝日の場合には、これらの日の翌日)。相続税は、原則として、納期限までに現金一括納付で行い、申告書は、被相続人の住所地の税務署へ提出する。

しかし、相続財産には、不動産や株式など、現金化に時間と手間のかかる資産もあり、申告期限までに現金でまとめて支払うことが難しい場合がある。そのため、納税には、現金一括納付だけでなく、相続税を分割して5年から20年の年賦で支払う「延納」や、それも難しい場合に、納付困難な金額を限度として、有価証券、土地などを納税する「物納」も認められている。

申告が必要にもかかわらず、その期限までに遺産分割協議が合意に達しない場合、法定相続分に基づいて税額を算出し、納税を行うことになる。そして、協議がまとまった後、それにより税額を再計算し、申告時よりも多くなった場合は「修正申告」、少なくなった場合は「更正の請求」を行う。「小規模宅地等の特例」などは、遺産が未分割の場合は適用できない。「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、その期限内に遺産分割を行い、修正申告や更正の請求を行うことで適用が可能となる。税負担が生じることや、二重の申告の負担を考えれば、遺産分割協議は、相続税申告期限より前に終えるのが望ましいといえる。

藤宮 浩
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
埼玉県出身。1993年、日本大学法学部政治経済学科卒業。95年、宅地建物取引主任者試験合格。2004年、不動産鑑定士試験合格及び登録。12年、フィナンシャルプランナーCFP登録。04年に株式会社フジ総合鑑定代表取締役に就任し、相続不動産に強い不動産鑑定士として、徹底した土地評価を行うことで有名。主な著書に税理士・高原誠との共著である『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(クロスメディア・マーケティング)。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。
高原 誠
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員
東京都出身。2005年税理士登録。06年、税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間600件以上の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。
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