「介護が政治家の原点」舛添氏は経験ほぼ0

舛添要一東京都知事が辞任に追い込まれました。

政治資金の私的流用など疑惑追及のプロセスでは、舛添氏の人間性が疑われる様々なエピソードがメディアに取り上げられましたが、そのひとつに介護体験があります。

舛添氏は実母の介護をし、その実体験が「政治家を志した原点だ」と語っています。

『母に襁褓をあてるとき――介護 戦いの日々』舛添要一著 中央公論新社

自身の介護体験を綴った著書『母に襁褓をあてるとき――介護 戦いの日々』はベストセラーになりましたし、それ以外にも介護経験をもとにした著書を何冊か出しています。そうした苦労が共感を集めたことも手伝って参議院議員に当選し、後の厚生労働大臣就任につながり都知事への足がかりにもなりました。

しかし、週刊文春をはじめとする複数のメディアが舛添氏の家族や介護施設関係者に取材をしたところ、介護体験の多くは嘘だというのです。

記事によれば介護をしていたのは姉夫婦で、舛添氏は月に1回程度、1時間ほど母親に面会に来ただけ。施設に入所していますから、排泄の介助は職員が行い、「舛添氏が母親のオムツを替えた経験はないのではないか」という証言もありました。

介護をした家族からすれば、舛添氏の介護体験談は議員当選のための好感度アピールに過ぎず、やってもいないことをやったと言ったり、苦労や母親への愛情を語ったりするのは許せることではありません。姉夫婦はすでに亡くなっていますが、その親族からは怒りを買って絶縁状態になっているそうです。

「介護は内輪で行われるものですし、様々な情や思惑が複雑に絡むものですから事の真偽はわかりませんが、もしそれが事実だとしたら、親族から怒りを買っても仕方ないでしょうね」

と語るのはケアマネージャーのFさんです。

「要介護になった老親の介護をするのは、(施設のスタッフを除けば)当然のことながらその子どもたち。要介護状態になった時は兄弟で話し合いをして、その負担をできるだけ均等にするのがベターですが、現実には難しい。たまたま親と同居していたり近くに住んでいたり、あるいは兄弟間で一番のお人好しといった人が介護の負担を一身に背負い込んだりすることが大半です。それが、兄弟の不和を招く元になることも多いです」