亡くなる人は増えるが後継ぎは減る。社会の急速な変化にあわせて、介護、葬式、墓の常識は今、ここまで激変した!
【QUESTION】遺骨を墓に入れず、側に置くことはできる?
「遺骨は菩提寺や霊園のお墓に埋葬して供養するもの」と考える人は、いまだ多数派を占め常識とされている。しかし近年、故人の遺志などを反映した散骨や樹木葬などにも関心が高まり、「“お墓”という形にこだわらない埋葬法が増えてきました」と語るのは、お墓・葬儀のスペシャリスト、佐々木悦子さんだ。
「なかでも、話をするとたくさんの質問をいただくのが『自宅供養』です。『遺骨を家に置いてもいいの?』『家のどこに、どのようにして置けばいいの?』という素朴な疑問からは、単純な驚きすら伝わってきます」
たしかに、“罰当たり”などと外野から非難の声が飛んできそうなだけに、「遺骨を家に置くなんて考えたこともない」というのが多くの人の正直なところだろう。
「いわゆる『墓埋法』では、遺骨を勝手に庭などの土の中に埋めることは禁じられています。しかし、遺骨を手元に置いておくことは問題ありません。また、遺骨をいつまでにお墓に納骨しなければならないという決まりもないのです」
では、そもそも遺骨を自宅に置いて供養したい事情とはなにか。
「故人への愛情から、ずっと側にいたいという方が最も多いですね。高齢化社会ということもあり、親が子の死をとむらう逆縁のケースも増えています。手塩にかけて育ててきた親としては、離れるに離れられないわけです。もちろん、単純に費用で悩む方もいます。葬儀・法要の簡素化にも見られるように、お寺との付き合いをできるだけしたくないとの考えです。現実問題として、お寺にまつわるお金、時間、労力や手間が惜しいと考える人、あるいは、かけたくてもかけられない人が増えています」
さらに家族関係が込み入っていることが理由となる場合もある。
嫁姑の関係が悪ければ、「同じお墓に入りたくない」という声が挙がるだろうし、前妻が他界して再婚した場合なども一筋縄ではいかない。新たな墓を立てるのも一案だが、都内の寺院墓地であれば300万円はくだらないといわれるように費用がかかる。墓が増える分管理の手間もかかる。そこで自宅供養の出番というわけだ。
「最近では、仏壇に遺骨を納める納骨庫がセットになった、納骨祭壇が注目を集めています。これなら、新たに墓を立てるより費用も安くすみ、遺骨の置き場所にも困りません。なかには、火葬をした後、納骨するまで遺骨を自宅に安置するための『後飾り壇』をそのまま利用している方もいます」
信仰心が薄れている現代においては、位牌より遺骨のほうに故人の魂を感じやすいのかもしれない。自宅供養であれば、ごく自然な会話をするように日々、故人と接することができる。遠方にあるお墓だと疎遠になりがちな問題が、みごと解消されるのだ。
【ANSWER】家に遺骨を置いてもOK。納骨祭壇という便利品も。
エンディングコンサルタントとして、全国各地で葬儀やお墓の勉強会を開催。著書に『知っておきたいお葬式Q&A』など。