法定相続人が誰かを確定する

「相続が発生したら何をすればいいか」――。誰もがいつかは直面する問題であるが、その手続きは複雑かつ広範囲である。しかも期限を過ぎると実行不可能になる手続きや不利益を被るものもある。準備不足のまま死去をむかえると、十分な時間をつかって故人をとむらうこともできなくなる。残された家族の間に不満を残さないためにも、相続手続きのスケジュールをあらかじめ把握しておくことが重要だ。

相続発生の事実を金融機関が把握すると、被相続人の預貯金口座は凍結される。口座が凍結されると、入金も含め、引き出し、引き落としなど一切できなくなるため、公共料金の名義・口座変更は速やかに行う必要がある。また、国民健康保険、後期高齢者医療保険に加入している場合は、死亡から14日以内に市区町村役場へ資格喪失届の提出、保険証の返納をしなければならない。さらに、生命保険を契約している場合は、被保険者が死亡したことを保険会社に通知し、保険金請求書などの書類を提出して保険金の請求を行う。

故人が残した財産の整理や相続税の申告のためには、まず「法定相続人の確定」をしなければならない。そのためには、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本を取得する必要がある。兄弟姉妹等からの相続の場合、さらに広範な戸籍が必要である。戸籍は市区町村ごとに管理されているため、被相続人の戸籍が移動している場合は、移動先ごとに請求する。さらに相続人全員の戸籍も取り寄せ、これらの情報を元に、「相続関係説明図」を作成し、相続人を確定する。戸籍の取得は負担が大きいため、行政書士、司法書士、税理士に代理取得を依頼することもできる。

同時に、「被相続人の遺言の有無」を確認する。もし、公正証書遺言以外の遺言が見つかった場合は、家庭裁判所において相続人立ち会いの上、検認の手続きを行う必要がある。公正証書遺言の有無については、公証役場で調査できる。

遺言でとくに注意しなければならないは、「遺留分」である。「遺留分」とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人が、相続財産を確保できる最低限の割合をいう。遺留分を侵害する相続分の指定や遺贈(遺言による相続財産の無償贈与)があったとしても、法律上無効とはならないが、相続人や受遺者(遺贈を受けた者)に対して、その侵害された部分を請求することができる。これを「遺留分減殺請求」という。遺留分は、父母や祖父母など直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の3分の1、その他の場合は2分の1となる。遺留分減殺請求権は、相続開始と減殺すべき贈与や遺贈があったことを知ったときから1年、相続開始から10年、どちらか早い日に消滅する。