いくら得意先とはいっても、あまり体裁を繕ったり、へりくだってばかりでもいけない。そこは、越山常務も江森さんも「ウインウインの関係が重要」だと認識している。実際、そうでなければ、長いつきあいは難しい。
江森さんは「自分は『飲めない』『歌えない』『踊れない』」と謙遜するが、ビジネス、特にフェース・ツー・フェースが基本の商売では、人柄がよくなければ、信頼も得られないし、腹を割った話もできないのである。その意味で、見た目はいたって温厚で、けっして饒舌ではないという江森さんが、進んで座に溶け込むことで、飲み会は自然に活性化する。
夜もすっかり更け、江森さんに「また明日からもよろしく」と手を差し出す越山常務の表情は、ことのほか満足げだった。
(熊谷武二=撮影 赤べこ塚口中央店=協力)