英語は世界で成功する「パスポート」

「I have a pen. I have an apple.」で、昨年話題を集めたピコ太郎さんの楽曲「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」。そのヒットの特徴は、動画サイト「ユーチューブ」を通じて、世界中で話題になったことでした。人気歌手のジャスティン・ビーバーさんが「この動画はおもしろい」と取り上げるなど話題が広がった結果、1990年の松田聖子さん以来、日本人として26年ぶりに全米ビルボードの「トップ100」に入る大ヒットとなりました。

なぜ「PPAP」が世界でウケたのか。その大きな要因は「英語の歌だった」ということでしょう。その歌詞は、英語を学びはじめた人が最初に習うようなシンプルな構文で書かれていますから、どんな国の人でも理解できます。英語は世界で成功するための「パスポート」なのです。

ビジネスの世界においても、英語は世界中で使える共通語になっています。海外の空港の免税店で化粧品などを買うと、注意事項などの書かれた説明書が同梱されています。その際、どんな国の化粧品でも、まず間違いなく英語の説明文が書かれています。そのほかフランス語、ポルトガル語、そして日本語、中国語など、様々な言語でトリセツが書かれています。

国際会議に出席すると、英語が重要なコミュニケーションツールになっていることを実感します。公式・非公式を問わず、世界中の人々がやりとりに使うのは、やはり英語です。非英語圏の人であっても、発音や文法に躊躇することなく、積極的にコミュニケーションを取ろうとします。こうしたなかで、日本人はどうしても億劫になって、日本人だけで集まりがち。せっかくの国際会議なのに、人脈や情報の広がりができません。

毎年1月には、スイス東部の保養地ダボスで「世界経済フォーラム」の年次総会が開かれます。通称「ダボス会議」には、政治家や世界的大企業のCEOなど、2000人以上の要人が集まりますが、やりとりは基本的に英語です。

今年は私もご招待を受けましたが、初めての予算編成に集中するため、ご辞退。話題を集めたのが、中国の習近平国家主席の存在でした。保護主義を批判し、自由貿易の重要性や地球環境保護を高らかに謳う習氏の演説に会場は戸惑いの空気も流れたと聞きますが、演説はあくまで中国語。ただ、中国は様々な国際会議に英語をネーティブのように話す高官を戦略的に派遣し、堂々の論を張ります。私の知る限り、ダボス会議などで、流暢な英語で明確な主張を展開されるのは元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんなど一握りです。

重要な国際会議では、誤解が生じないように通訳が付きます。それでも、休憩時間のちょっとした会話から、相手の本音をつかめることもあります。なにより英語による直接の対話で、世界中の知り合いから情報が入るようになるものです。

私はIOC(国際オリンピック委員会)の関係者とは直接メールのやりとりをしています。もちろん英語です。彼らが来日した際には、食事を一緒に取ることもあります。お互いの顔を見ながら、身の回りの話題で笑い合う。そんな人間関係を構築することで、五輪の開催準備もスムーズに進められています。今年2月には安倍晋三首相が訪米し、トランプ大統領とゴルフや食事をご一緒しています。どんな会話を交わされたのか。興味のあるところです。