「バカでもわかる英語」をバカにするな

トランプ大統領が誕生しました。

昨年は、大方の予想を覆し、大統領選でクリントン氏に勝利しました。日経平均株価も一時的に下落するなど、その衝撃は大きいものがありました。そのトランプ氏、演説やツイッターなどでの表現方法が注目されています。就任演説は、その内容の賛否はさておき、平易かつ丁寧な英語で今後の方針について語っていたように感じられました。

平易さに関しては、カーネギーメロン大学の教授(英語研究)が昨年3月にある発表をしています。それによれば、トランプ氏の文法は小学6年生レベルだ、と(大統領選のネバダ州勝利宣言“We are winning winning winning”は小4レベル)。また、他の大学教授(言語学)は、平易な言い回し(bigやhugeなど)や、意図的な「反復」や「話し言葉」を駆使する点がケネディ大統領に似ているとも解説。極端な物言いや論点のすり替え、誇張表現などとともに、何より平易さがトランプ流のスタイルだと専門家が分析しています(参考:読売新聞2017.1.18付)

そうやってトランプ旋風が巻き起こっている頃、日本国内でも、ピコ太郎のPPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)が流行語として大きなブームになりました。若者だけでなく、会社員の忘年会でピコ太郎のマネを強要されて「ピコハラ(ピコ太郎ハラスメント)」という言葉がネットで話題になるほど、広く知られていました。

さて、ここで質問なのですが、この2人の意外な共通点は何か、分かりますか?

それは、多くの人の心に残る、好かれる言葉は必ず「シンプル」であるということです。言い方を悪くすれば、「バカでも分かる」「子供でも理解できる」というものだということです。

シンプルな英語でなければ受け入れられない

PPAPがそもそもブームになったきっかけは、米国歌手のジャスティン・ビーバーがTwitterでツイートしたことだったそうです。このツイートは現在では12万リツイート以上、動画は1300万回以上も再生されるほど、世界中で観られている動画になりました。

ここで疑問なのが、なぜ英語を母語とするジャスティン・ビーバーが、日本人であるピコ太郎の動画を気に入ったのでしょうか?

それは、ピコ太郎の英語が「誰にでも絶対わかるシンプルな英語」だったからです。実際に登場する英文を見てみると、

I have a pen.
I have a apple. ※正しくはan apple
Ah! Apple-pen!
Pen-Pinapple-Apple-Pen

です。あえて日本語を付けませんでしたが、英単語の意味が分かればもうそのまま理解できるほど、シンプルです。このシンプルさがあったからこそ、英語圏の人や日本の子供であっても、すんなり受け入れることができたのです。

日本でも、英語を知らない子供でもPPAPをマネできたことが、流行の大きな一因になったのでしょう。つい口ずさんでしまう、記憶に残る、これがブームを生むためには大事な要因です。