とにかくもめ事の仲裁では、話を聞く、しゃべらせることが大事です。ただし、その場合は、双方を引き離して別々に話を聞くことも原則です。一緒に聞くと、互いの反発心から事実がねじ曲げられたり、かえって両者を激高させてしまうことがよくあるからです。

大声を出して相手に迫れば、相手も大声で応じる。喧嘩の場面ではよくあることです。相手に合わせ、同じような反応を示す行動をミラーリングといいます。逆に、好意的な人に対しては、相手も平穏な態度で応じようとします。

そのため、喧嘩で両者がにらみ合っている場に介入するときは、警察官は穏やかに、笑顔で「どうかしましたか?」と話しかけます。両者がつかみ合いをしているようなときは、逆に大声を上げて割って入り、こちらに注意を向けさせます。紛糾している両者には、相手しか見えていないからです。

取っ組み合いであろうと、静かな反目であろうと、仲裁はその場のいら立ちや、荒れた空気を鎮める対処がスタート地点です。それがなくては、両者にまともな話を聞くこともできません。

職場でもめている同僚同士の仲裁は、基本的にしないほうがいいと思います。両者をよく知っていれば中立の立場は取りにくく、どちらかに肩入れすれば遺恨を残しかねません。ただ、両者が興奮して言い合っているような場面では、何がしかの介入が必要になります。

警察官も一本気の熱血漢が多いので、互いにぶつかり合うことがあります。以前、そんな場面に居合わせた私は、一方の警察官に「○○さ~ん、電話ですよ」と言って2人を分けたことも。こういうときは嘘も方便ですね。

まずは紛糾する2人を引き離して冷静にさせる。解決は上司に任せるか、中立な立場で仲裁のうまい人に委ねる。無駄に巻き込まれて、当事者になってしまうことだけは避けたいもの。適度な距離を保つことが大事です。

Y's LAB社長、やひさ行政書士事務所代表 屋久哲夫
1968年、埼玉県出身。91年東京大学法学部卒業、警察庁入庁。警視庁広報課長などを経て2013年警察庁官房付(警視正)。同年依願退職。現在、危機管理コンサルタントとして活動中。
 
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(高橋盛男=構成 石橋素幸=撮影)