基本的に他人同士のトラブルは、介入を避けられるものなら避けたほうがいい。逆恨みされるなどのリスクが生じます。

職場の社員同士の諍いは、大手企業ではあまりないんじゃないですか。不穏な雰囲気の社員たちがいたとしても、口汚く罵倒し合ったり、つかみ合いの喧嘩になるようなことはまずないでしょう。

風俗店・飲食店経営コンサルタント 有山祐樹氏(仮名)

学歴の高い人は、人間関係の調整能力がもともと高いので、その集団ではトラブルが表面化しにくいんです。むしろ、中小企業ではまま見られますね。風俗業界では日常茶飯事ですけれど。

もし諍いが表面化していなくて、業務に支障がなければ、私が経営者か上司なら放置します。わざわざ火種を大きくすることもないですし。一番、現実的な選択肢だと思います。ただ、そういう不穏な空気があると、周囲にストレスがかかりますし業務にも影響しますから、放置すると決断したら、それについてほかのメンバーの合意を取り付けることは、けっこう重要かと思います。「仕事上、問題がない限り、あんなのは気にするな、関わるな」ということです。

諍いが表面化していれば、もちろん仲裁が必要です。ただ、仲裁に当たるのは、立場が上の人がいいですね。同等だと「何でおまえがしゃしゃり出てくるんだ」ということになりますから。

私は職場であれば、どちらかに非があっても、責めたり「ああしろ、こうしろ」とは言いません。「今の状態は、おまえにとって損だ」「こうすれば、もっと仕事の質が上がる」「ああすればおまえの価値が上がる」という具合に説得します。頭ごなしに「おまえが悪い」と言うときは、相手が会社を辞めてしまうことも織り込みずみのときです。

自分に大して実力もないのに、同僚をやっかんで反発したり、嫌がらせをするケースもあります。これは水商売の女性同士のもめ事に多い。

そういうときは実績ですね。「あなたの売り上げは700万円。彼女は1000万円だから、この店で発言権が強いのは当たり前。売り上げで彼女に勝ったら、言うことを聞いてやるよ」。たいていはそれで収まります。

こういうときは、はっきりと決着をつけたほうがいいですね。うやむやにすると、理不尽な言動を認めることになって、無制限の権利主張が始まり、収拾がつかなくなります。

それから、やたらと人とぶつかって迷惑ばかりかけている人をかばうケースも、私の場合はあります。相手は私の前では素直で、よく言うことを聞く。けれど、ほかの人には不義理ばかりで悪評だらけ。けれども、そういう人を、私は決して切り捨てないんです。

私が切ったら、彼は行き場がなくなってしまいます。下手をすれば自暴自棄になり、何をしでかすかわからない。でも2人の信頼関係が保たれていれば、改心の余地があります。だからかばうのです。

これは法的な正否よりも道義を大事にする私の流儀ですから、一般的とは言えないかもしれません。でも、他者に危害は加えなくても、なぜか周囲の人とそりが合わずに孤立しがちな人は、普通の職場でも見られます。そういう人に対しては、何らかの配慮や庇護が必要だと思います。

風俗店・飲食店経営コンサルタント 有山祐樹(仮名)
風俗店・飲食店の起業・経営およびチェーン展開で成功、そのノウハウを生かし、企業経営に限らぬ幅広い分野での悩み事の相談を引き受けている。
 
(高橋盛男=構成 石橋素幸=撮影)
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