顧客、取引先、上司を怒らせてしまった。誰にでも起こる大ピンチ! ミスを帳消しにする謝罪で、以前より良好な人間関係を築ける人もいる。現代人にとって必須のライフスキル、「謝り方」を徹底検証する。
Q.
あなたは家電量販店の販売員。お客様が来店し、購入した商品を使ったら自宅のテーブルに傷がついたと言う。それを見にこいと言われ、訪問することに。リビングに通され、自身で調べ上げた情報を並べ立て、話は終わりそうもない。さて、あなたならどう対応する?【A】「すごく高度な知識をお持ちなんですね」とおだてる
【B】「お客様がおっしゃるとおりです」と相槌を打つ
【C】「なるほど。なるほど」と話が終わるのをただ待つ
あなたは「かつての部下」代わり
お客様から電話でクレームが入った。いくら話しても、電話ではなく謝りにこいと言って引かない。謝罪に訪れると上から目線で話し始める。こうした「お説教」タイプは定年後の男性に多いという。
時間や体力にゆとりのあるシニアが増えている。そういうと聞こえはいいが、実態はやることがなく、命令する部下や便宜を図ってくれた業者もいなくなったため、代わりを販売員やお客様相談室に求めるのだ。
「年代別で見ると、苦情を言う率が高いのは60代、とくに男性です(図参照)。肩書がなくなり、家でも居場所がない。些細なことで呼びつけ、謝罪に出向くと『君、上がっていきなさい』と客間に案内され、話が長引くことがよくあります」(苦情・クレーム対応アドバイザー 関根眞一氏)
玄関先で結構ですと言っても「いいからこちらの部屋へ」と勧められ、上がってみるとお茶と菓子が用意されている。クレームの原因となった話は比較的早く終わるが、「もし私だったらこんな対応をする」「君の会社も苦しいのはよくわかる」「時間があれば私が教育してあげたい」などと、上司目線の話が続く。
「謝罪にきた担当者を相手に、自分が管理職だった頃の感覚を楽しんでいるのです。決して悪質なクレーマーではありませんが、指導をしたがる点が厄介です」(関根氏)
こうした相手にやってはいけないのが、すぐに解決策を提示して話を切り上げようとすること。これはお説教タイプに限らず、すべてのクレーム対応の基本とクレーム・コンサルタントである谷 厚志氏は説明する。
「何らかのトラブルで怒っている方は『自分がどんな嫌な目に遭って嫌な気持ちになったか』や『おまえのミスによって会社(あるいはコミュニティなど)で私の立場がなくなった』ことをわかってほしいと思っているので、まず何が起きたのかを理解する。そのうえでお詫びをするのです。『交換します』『代金はお返しします』と、早くその場を収めようとする人も多いのですが、かえって怒りに油を注ぎかねません」(谷氏)