他人の言動に過剰反応、物に当たる、大声で怒鳴る。すぐキレる人はなぜ、感情をコントロールできないのか。脳科学の観点から、3人の識者が解説する――。

未発達な前頭前野がキレる人を生む

近頃、街中でキレる人をよく見かける。人ごみで肩がぶつかった、電車が遅れているのに駅員が謝らない、店員の口の利き方が生意気だったなど、些細なことで激しく怒りだし、ひどいときは暴力沙汰に発展することもある。

キレる人は職場でも増えているという声を聞く。仕事が思い通りにいかないとか、同僚と意見がちょっとくい違ったなど、自分にとって気に入らないことがあるとヒステリーを起こしたり、暴言を吐く。他人の言動に過剰反応し、物に当たる、大声で怒鳴るなどを繰り返す――。日本人はいつから、こんなにもキレやすくなったのか。ひょっとしたら、子供時代にも原因があるのだろうか。

キレる原因としてまず大きいのは、「(脳の最前部に位置する)前頭前野が未発達であること」と語るのは聖路加国際病院精神腫瘍科部長の保坂隆氏。同じく脳科学コメンテーターの黒川伊保子氏も、「前頭前野が不活性であること、最悪は未発達の状態にある」のが原因だと指摘する。

人間の脳には前頭前野という部位があり、ここが物事全体を把握して、欲望や感情を抑える働きをしている。腹が立つことがあっても、ここは大人の対応をしよう、というような判断を下すのがこの部分。そして、食欲や睡眠欲など動物的な本能を司る大脳辺縁系などが先に発達するのに比べ、脳の中でも最後に成長し、十代の終わりまで発達し続けるというのだ。

脳は使えば使うほど発達するが、使わなければ発達しない。したがって、子供の頃、我慢や抑制をせずに育つと、この部分の発育が弱くなる。