疲労やストレスを生むパソコン・スマホ生活
2つ目の原因は、脳の中にあるセロトニンという神経伝達物質の欠乏だ。これは前頭前野の機能をスムーズに動かすために必要な物質なのだが、「これが現代人には不足しており、キレる人が増える理由になっている」と東邦大学名誉教授の有田秀穂氏は指摘する。
セロトニンを分泌させるセロトニン神経は、脳の中心である脳幹のさらに中央部分の縫線核というところにある。ところが、疲労、ストレス、夜型生活、運動不足、人とのコミュニケーション不足などで、セロトニン神経の働きが弱まってしまうという。パソコンやスマホが普及した現代生活には、セロトニン神経を弱らせるこうした要素が満ち溢れているのだ。
「普通のサラリーマンが暴行で検挙されるような事件が、この20年ほどうなぎのぼりで増えていますが、これは社会のIT化が進んだ時期とぴったり重なります」と有田氏は分析する。
彼らは夜遅くまでパソコンやスマホをいじっている。そして、翌日の出社後も1日中、ずっとパソコンの前に座って仕事をしている。お昼もパソコンでインターネットをしながら1人でコンビニ弁当を食べることが多い。
そして夕方になると疲労とストレスでセロトニンの分泌がほとんどなくなっているような状態のまま帰途につく。すると、たとえば、通りすがりの人とちょっと肩がぶつかったくらいで怒りが抑えられなくなり、暴力沙汰になるというわけだ。