相談を持ちかけるとき、企画を提案するとき、顧客との雑談――ビジネスの現場で欠かすことができないコトバでのやり取り。話し方一つで、説得力や信頼度はグンッとアップするのです! “話を聞く”立場の管理職たちに、よくある悩みをぶつけてみました。私たちに足りないのは、どんなこと?
【悩み相談】意見が対立している相手と議論をするとき、どうしてもけんか腰になってしまいます ――36歳・マーケティング

まずは相手の意見を肯定しましょう

答えてくれる人:アディダス マーケティング事業本部 ビジネスユニットグループトレーニング シニアディレクター 山田恭子さん

社内では商品企画、社外に向けてはマーケティングと、社内外で常に交渉の場面がある山田恭子さん。仕事上でのコミュニケーションにおいていつも心に留めているのは、“agree(同意・同調)から入る”ことだ。

「自分たちが実現したいことや持っていきたい結論はありますが、まずは相手の意見を受けとめて代弁します。そちらのチームはこういうふうに考えていると思いますが、我々はどちらかというと、こちらを優先したいと思います。その理由はこうです……、というように、外堀を埋めてから話すとうまく話が進むことが多いですね」

対立ではなく同調から。これまで数多くの折衝を重ねてきた山田さんが得た経験則だ。

座右の銘:有能なものは行動するが、無能なものは解釈ばかりする●会議などで議題に対し批判批評するだけの人と、問題に対し前向きに解決案・代替案を提案してくる人がいる。結果を残すのは高い確率で後者の人々(少数)だと痛感。

「意見がぶつかっているときほど、相手の気持ちを理解することが大事。人は自分のことを否定する人の話は聞きませんから。でもいったん寄りそうと、冷静に議論できるものですよね」

部下を叱るときも同じ。頭ごなしに注意することはない。

「私も昔、同じようなことをよくやったけどね、とか、こういうふうに進めたい気持ちはよくわかる、と最初にagreeする。考えをわかってくれているという安心感を与えるんです」

また、相手が誰であっても丁寧語で話すのは、昔から変わらない習慣だ。

「日本語は言葉の種類やトーンで伝わり方が変わるので、英語よりも難しいと感じます。でも丁寧語であれば、まず間違いありません。ある程度、その人の性格によって説明の仕方を変えますが、基本的に社内でも社外でも、部下でも上司でも同じように接します」

部下にしろ、取引先にしろ、自分が優位に立ったときこそ、どう話すかがポイントだという。

「何を話してもいい、何をしてもいいというように“全開”にしていては次につながりません。一貫した姿勢でいなくてはいけないな、と思っています」

これがいちばん難しいですけれども、と笑顔を見せる山田さんからは、相手の立場に立とうとするどこまでも謙虚な姿勢がうかがえる。

山田恭子
アディダス マーケティング事業本部 ビジネスユニットグループトレーニング シニアディレクター。1971年生まれ。経営コンサルティング会社、外資系小売会社等を経て、2015年入社。トレーニング商品全般のマーケティングを統括。16年以降、「Women'sプロジェクト」の監督も。

長野陽一=撮影