▼解説

高い学歴は、頭がいい証拠だ。にもかかわらず社会に出た途端、学生時代の評価とは裏腹に、仕事で悪戦苦闘したり悩んで行き詰まる人は少なくない。

これまで世界中で数多くのエリートと仕事をしてきた投資家、ムーギー・キムさんは、「学歴や勉強のIQの高さは、仕事能力を予測しません」と言い切る。

「学歴が高いことは、いくつかの基本的能力の代替的指標にはなります。しかしリーダーシップ、コミュニケーション能力など、仕事能力における重要な資質はまったくわかりません。仕事で求められるのは、学歴や偏差値とはまったく関係ない“仕事のIQ”とでも呼ぶべき、行動特性であり、マインドセットなんです」

“仕事のIQ”が高い人と低い人を分けるものは何か。キムさんによれば、特に優先順位が高いのは、「好きなことを仕事にしているか」だという。

「仕事が趣味であり喜びの源泉という人は、四六時中、仕事について考えているから、自然と人と差がつきます。特に『好きなこと』×『自分が得意なこと』×『社会的需要のあること』の3つの基準で仕事を選んでいる人は強いですね」

くわえて主体的に仕事を選ぶことから生じる責任感と信頼感も“仕事のIQ”を高める要素だ。適合性の低い会社に、自分を偽って入社したKさんは、営業成績が伸びないのは外因だと考えたり、仕事仲間と距離を置いたりするなど、責任感、協調性に欠けているきらいもある。改めて自分には何の要素が欠けているのか、そして自分が本当にやりたい仕事は何かを見直す必要があるだろう。

▼キムさんのアドバイス

最大の問題は、向いてない仕事を選んでいること。やりたいことを早々とあきらめ、特別入りたかったわけではない会社に自分を偽った面接で内定を得た。「内定=成功」ではなく、「向いていない内定=キャリア人生最大級のリスク」ととらえなければなりません。

職場の人に違和感があると嘆くのも、お寒い限りです。Kさんが本当にやりたいことと違うことを仕事に選んだのだから、周囲が異なる人種であるのは当然です。

同じ学歴の人の話でないと楽しめないのは、心得違いです。漫画の話題、恋人と行くパチンコからも、マインドセット次第では様々な市場調査ができます。異なる視点、異なる嗜好から新しい世界を学ぼうという謙虚さが必要です。
ムーギー・キム
1977年生まれ。プライベートエクイティファンドで働く傍ら、作家としても活躍。近著『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『一流の育て方』(ダイヤモンド社)がともに大ベストセラーに。
(PIXTA=写真 アドバイスしてくれる人:投資家 ムーギー・キム)
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