2社目の上場に向けて突き進む

「面接試験で同じような評価の人が2人いて、どちらかを採用することになったら、学歴の高いほうに内定を出すように、と人事担当者に指示をしますね。学歴が高い人は、理解力が高い。仕事を覚えるのも速い。会議などで私が尋ねたことにも正確に答える。オペレーション的な仕事を決められた時間や方法などで、きちんと処理することもできる。

森下篤史・あさくま社長

だけど、仕事が本当にできるかどうかは別の問題ですよ。学歴が立派でも、仕事ができずに、伸び悩む人はたくさんいます。うちの社員たちは、そのことをよく知っています」

ステーキのレストランチェーン「あさくま」の代表取締役社長の森下篤史氏が話す。1947年、静岡県に生まれ、現在、69歳。「現役を続けられるのも、あと31年しかない」と忙しい合間に、取材に応じてくれた。

「私が社会人になった頃は、学歴社会と言われていました。この20数年で、ずいぶんと変わってきましたね。最近は、学歴社会とはあまり聞かない。

けれど、資格社会になっている。子どもが成人し、医師などになると、家族も親戚も喜びますよね。資格を喜ぶんだよね。甘いよ(笑)。実は、医師になってからこそが大切なのに。

日本人は、見てくれとか、形にこだわるのかもしれません。弁護士になったといって喜ぶ。私は、そんなものは意識しません。会社を経営するにあたり、社員の採用や配属、昇格などで学歴、性別、年齢、国籍などは関係ありませんね」

森下氏は、1997年、50歳のときに創業した中古厨房機器販売の「テンポスバスターズ」を2002年にジャスダック市場に株式上場させた。ユニークな経営手法や、歯に衣着せぬ発言で、メディアでいちやく話題になる。

2008年、61歳のとき、名古屋市を中心に展開するステーキレストランチェーン「あさくま」の社長に就任。経営再建に乗り出し、就任5年目以降の業績は今や業界トップレベルに。平成28年度には、売り上げ90億円に達する見込みだ。「テンポスバスターズ」に続き、上場を視野に入れている。現在は、関東にも出店攻勢をかける。子どもが遊園地に行ったような感覚になれることを願った、参加型レストランもオープンした。