▼藤原さんからのアドバイス
タイトルやキーワードを考えるとき、まず文章を書いてから、それを要約する言葉を探そうとしていないでしょうか。じつはそこに、いいタイトルやキーワードが浮かばない原因があります。
言葉やフレーズが無限の宇宙に広がっているイメージを持ってください。その中から使いたい言葉だけを箱に集めて文章を書いても、広大な言葉の宇宙から見ると、その箱は小さな点の一つにすぎません。にもかかわらず、箱の中からだけタイトルやキーワードを探そうとするのはもったいない。むしろ箱の外に、読み手を惹きつけるタイトルやキーワードは待っています。
それにもかかわらず書き上げた文章の中から言葉を探そうとするのは、タイトルやキーワードを文章の従属物のように捉えているからです。多くの人は文章を先に書きますが、ときにはいいタイトルに触発されて文章が思い浮かぶこともある。タイトルと文章は、けっしてどちらかが上という関係ではありません。
文章を書き上げてからタイトルやキーワードを探すときは、自分の書いた文章からいったん離れるべきです。タイトルが思い浮かばないときに文章をもう一度読み直そうとする人もいますが、ますます箱の中に閉じこもって考えてしまうので逆効果です。あえて自分の文章を忘れることで、タイトルやキーワードの選び方が自由になります。
そのときに、せっかく見つけたタイトルやキーワードが、文章と整合性が取れないケースもあるでしょう。その場合は両者のすり合わせ作業が必要になりますが、そこで手を入れるからこそ、文章もタイトルもさらに磨かれるのです。
作家●藤原智美
1955年、福岡県生まれ。『王を撃て』で小説家デビュー。92年、『運転士』で芥川賞受賞。『「家をつくる」ということ』がベストセラーに。『暴走老人!』『検索バカ』では現代社会の問題の本質を説く。
1955年、福岡県生まれ。『王を撃て』で小説家デビュー。92年、『運転士』で芥川賞受賞。『「家をつくる」ということ』がベストセラーに。『暴走老人!』『検索バカ』では現代社会の問題の本質を説く。