追い込まれ解散だけは避けたい思惑

衆院議員の任期満了を来年末に控える中、政府・自民党の次期衆院選戦略が揺れている。これまでは今年秋の解散・総選挙を視野に入れていたが、小池百合子都知事による「小池新党」が夏の都議選で圧勝する勢いで、その修正を余儀なくされているのだ。連立与党を組む公明党はすでに都議会では小池氏サイドについており、自民党の「選挙力」も今や剥がれてきている。昨年夏に参院選との衆参ダブル選挙を見送り、年末年始に模索していた衆院解散を断念した安倍晋三首相。首都・東京で自民党東京都連に「NO」が突き付けられる中、どのような策に打って出るのか次の一手を追う。

ダブル選挙で小池新党と公明党を分断することはできるか。(時事通信フォト=写真)

2014年12月の衆院選で圧勝し、圧倒的な議席数を維持する自民党は、首相の悲願である憲法改正に必要な3分の2の議席確保を理由に衆院解散を見送ってきた。しかし、来年末で任期満了を迎える現職議員の間には「何回も解散を先送りして、来年になにかひとつアクシデントがあれば自民党は逆風になる。『追い込まれ解散』だけは避けるべきだ」(自民党閣僚経験者)との声が充満する。09年、麻生太郎首相(当時)が任期満了間際に解散し、野党に転落した苦い経験があるためだ。

とはいえ、政権与党に有利なタイミングで衆院解散を断行するにも、その選択肢はもはや限られている。国会スケジュールや外交日程を考慮すれば、常識的には「今年秋」「年末年始」「来年春~夏」の3つだ。来年9月には安倍首相の自民党総裁任期を迎え、石破茂元防衛相や岸田文雄外相らが総裁選に出るとなれば衆院解散を断行するのは難しい。現職の総理・総裁が不確定要素を取り除くためには来年夏までに解散し、その勢いで総裁任期延長を確かなものにしておきたいというわけだ。

だが、首相周辺の脳裏には小池新党の動向が浮かぶ。このままの勢いで小池氏率いる改革勢力が7月の都議選で圧勝した場合、その後に衆院を解散するのは困難視されるためだ。実際、近年の都議選の結果は衆院選と直結するといっても過言ではない。民主党が政権交代を果たした09年は、都議選で民主党が第1党に躍進し、その後の衆院選で大勝。13 年の都議選では、その半年前の衆院選で自民党が政権奪還を果たし、自民党は60議席近くを獲得した。

今回、今年秋に解散総選挙を迎えることになれば、その直前に実施される都議選の結果が影響するのは間違いない。小池氏が都議選圧勝を受けて国政政党の立ち上げに踏み切れば、小池新党は衆院選でも地滑り的勝利を果たし、自民党の議席が大幅に減少する可能性もささやかれる。解散時期が遅れれば遅れるほど小池新党の準備が整うため、その傾向は強まるとみられている。実際、マスコミの世論調査では自民党支持層の約6割が「小池支持」となっており、自民党が誇る組織力は4割程度しか機能していない異常事態といえる。

もはや手詰まり感が漂う中、安倍首相が起死回生の一手として模索を始めたのが、7月の都議選に合わせて衆院選を行う「都議選・衆院選のダブル選挙」だ。安倍政権の支持率が5割強で推移し、自民党の政党支持率も4割近くをキープしている今、小池新党が「完成形」を迎える前に解散を断行する「ダメージコントロール戦略」に懸けるというわけだ。都議会では小池氏サイドに回っている公明党も、衆院選となれば自民党と全国の選挙区で協力する従来の姿勢に戻るとみられる。

ただ、圧勝した前回衆院選並みの結果は期待できず、最大で100議席近い同僚議員が落選するリスクがある。特に、小池氏と対峙する自民党東京都連の下村博文会長や萩生田光一官房副長官といった首相側近が敗北する可能性も指摘されている。自民党幹部は「今の『小池旋風』に対抗するためには、『核爆弾』並みのインパクトを持って勝負に出るしかない」と現状を解説する。今のところ国会日程はスムーズになると見込まれており、5月の大型連休以降はいつでも解散できる「空白状態」になりそうだ。盟友の落選を知りながらも「安倍ファースト」でダブル選を断行するか。17年「夏の陣」は今後の日本を占う選挙となりそうだ。

(時事通信フォト=写真)
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