「男の先生にうちの娘の着替えをさせないで」、保育施設に子供を預ける保護者の声と男性保育士の置かれる状況から見えてきたものとは――。

保母から保育士へ。その先にあったものは……

男女共同参画社会基本法(1999年)の施行に伴い、「保母」や「看護婦」といった職業ジェンダーを固定する呼称が見直され、「保育士」「看護師」へと変わったのは、もう18年前のこと。男性保育士の姿もよく見られるようになり、女性の職場とされた保育現場は過去のものとなった。

それは女性の活躍が社会の各所で進み、例えば「山の神様が嫉妬して事故が起きる」という理由で長らく女人禁制とされていた山のトンネル掘削工事に「ドボジョ(土木女子)」技師の参加が受容され始めたのと同様だ。いまや保育所や保育園は大人の男性の職場でもあることに、私たちは社会として合意している。

そんな中で、「男性保育士活躍推進プランを策定した」との熊谷俊人・千葉市長のツイッター投稿をきっかけに、「男性保育士による女児の着替えやおむつ替えを容認できるかどうか」との論議がSNSやニュースサイトで沸騰。これまで保護者たちの間で静かに沈殿していた男性保育士への抵抗感が顕在化した格好だ。

熊谷俊人・千葉市長はツイッターでこう指摘する。

「(男性保育士活躍推進プラン策定について)女児の保護者の『うちの子を着替えさせないで』要望が通ってきた等の課題が背景にあります。女性なら社会問題になる事案です」

「娘を男性保育士に着替えさせたくないと言う人は、同様に息子を女性保育士に着替えさせるべきではないわけですが、そんな人は見たことがありません。社会が考慮するに足る理由無しに性による区別をすることは差別です。女性活躍を進める中だからこそ、真剣に日本社会が議論し、乗り越えるべき課題です」