「おむつ替え」が築く信頼感

女児の着替えや排泄は女性保育士、男児は男性保育士が担当することは「同性介助」と呼ばれ、児童が精神的に発達することで羞恥心などの感情が芽生えたときに、その心理負担を取り除く目的で、保育側の配慮で行われる。だが、それを保護者が自らの「印象」や不安、生理的嫌悪感から保育所へ要求するケースも決して少なくない。

しかし、保育の日常業務発生率において、園庭での遊びは85.6%である一方、着替えの発生率は99.6%、排泄の対応は87.2%に上る(厚生労働省 第3回保育士等確保対策検討会資料より『保育士1人1日あたりの主な業務の時間及び業務発生率』)。人手不足の現場で、保育士の性別を選んで業務を割り振っていては仕事が回らない。

また、「排泄の対応程度なら同性がやればいいじゃないか」との考え方にも、子育て経験のある保護者や保育の専門家から疑問が上がる。おむつをしている赤ん坊や、まだ幼い子供にとって、排泄の介助対応をしてもらうことは信頼感を築く上で大きな要素となる。日常の保育活動の中に排泄や着替えは自然と存在するものだ。

それだけを切り取って別の担当を付けるといった分断した活動は、むしろ例えば女児に対してなら「男性の先生は私のトイレットトレーニングや着替えを手伝ってくれないのはなぜ」と疑問を持たせる。これは、大人たちの隠れた事情や理由に気付かせ、かえって固定したジェンダー観を早期から強調して教えることになる。男女分け隔てない対応のほうが、子供の視線からすれば自然なのだ。

それでも特に男性保育士たちは、「あの先生におむつ替えをして欲しくない」「プールに一緒に入って欲しくない」など保護者から名指しされる職場環境にあり、理不尽と感じながらも黙って保護者感情を受け入れてきた。これが「男性保育士」進出以来の歴史であり、それゆえの実働率の低さなのだろう。