キャリアアップする、お金を増やす、家庭と仕事を両立させる、教養を高める。どうやったら「一段上」の自分になれるのか。達人たちのアドバイスを聞こう。

目的:お金を増やす
●教えてくれる人:経済評論家 加谷珪一さん

「トランプ大統領」の誕生によって市場の環境は大きく変わった。選挙終了直後から株高が進み、トランプラリーともいうべき状況が続いている。一連の相場は期待先行で、そう長くは続かないとの見方もあるが、個人投資家の中には、相場に出遅れて焦っている人も多いはずだ。これまで投資に消極的だった人もトランプ経済のスタートに合わせて、本腰を入れようと考え始めているかもしれない。

経済評論家 加谷珪一●仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業。日経BP社、野村証券系投資ファンド運用会社を経て独立。個人投資家としても知られる。『お金持ちの教科書』『新富裕層の研究』など著書多数。

個別の分野においてどう行動すべきかを考える際には、大きな枠組みから落とし込んでいくのがスジだ。俯瞰的に見た場合、トランプ政権の経済政策は大規模なインフラ投資と減税の2つに集約することができる。

トランプ氏は10年で1兆ドルという巨額のインフラ投資を計画している。もし、これが実現すれば、米国のGDPは年0.6%ほど押し上げられる。古くなったインフラが復活する効果もあるので、米国経済は当分の間、堅調に推移する可能性が高い。インフラ投資の財源として米国債が追加発行されるので、金利が上昇し、それに伴ってドル高が進むことになるだろう。

日本経済は基本的に米国経済に依存しているので、このシナリオが続けば製造業を中心に業績の伸びが期待できる。ただ、製造業はもはや輸出中心の業態ではないため、米国で得られた利益は日本にはあまり還元されない。内需の伸びは外需に比べていまひとつとなる可能性が高い。リスク要因としては、期待先行で市場が過剰反応していないか、政策が実行されない可能性はどの程度か、保護主義の台頭でこれらの経済政策が阻害されないか、といったあたりを考えればよい。

トランプ相場がどこまで続くのかは誰にもわからないが、大きな流れが変わったことは間違いない。それに伴って資産構成を見直すことは重要である。