トランプ氏がアメリカの次期大統領に決まり、日本の株価は大幅に上昇。NYダウ平均株価も上昇を続けている。2017年もこの「トランプバブル」が続くのか。アメリカ共和党のドン、グローバー・ノーキスト氏とともに2017年の経済を占う。

──全米税制改革協議会(Americans for Tax Reform)とは、保守派の実質的な司令塔として強い指導力を持ち、大統領選挙戦でトランプを支持してきた米国最大級の政治団体である。同協議会の会長であるグローバー・ノーキスト氏は、共和党の意思決定に強力な影響力を行使するドンだ。今回、プレジデント編集部はノーキスト氏への独占インタビューに成功し、トランプ大統領誕生後のアメリカ経済の展望を聞くことができた。

GROVER NORQUIST●保守派の実質的な司令塔として強い指導力を持つ米国最大級の政治団体全米税制改革協議会(ATR)の会長を務める人物。ハーバード大ビジネススクールで経営学修士号を取得。ロビイストなどを経て1985年に全米税制改革協議会を設立。(写真=時事通信フォト)

悪質なオバマの政策がすべてストップ

トランプ勝利に伴う株価の値上がりは、バブルではなく実際に意味があるものだと考えるべきだ。アメリカでは、ほとんどの人々が「ヒラリー・クリントンが大統領に選出されること」や「民主党が連邦議会の上院で勝利すること」のどちらも高い可能性で起きると想定していた。それらは同時に、オバマ大統領が設定した政策課題が継続して可決していくことや、労働組合がさらに強力になることも意味していた。

これまでアメリカでは、自営業者、フランチャイジー、シェアリングエコノミーを含む経済の大半の「独立して働く人々」が、オバマ政権下でひどい規制と課税に苦しめられてきた。また、石炭などの伝統的なエネルギー産業分野やシェールガスの採掘に用いられる水圧破砕法も規制の対象にされてきた。株式市場の参加者は、高税率、さらなる規制、伝統的な民主党の労働法強化などによって、経済が悪化するだろうと考えていた。

しかし、トランプと共和党の勝利によって、これらの悪い政策のすべてが変わる。かわりに、オバマケア廃止、減税政策、規制緩和など、いくつかのよい政策が実行されることになるだろう。これらよい政策を実行するだけでなく、今後も継続すると思われていたオバマ政権による悪質な政策、すなわち銀行・エネルギー・ヘルスケアエコノミーの規制を含むさまざまな規制がすべてストップすることで、アメリカには確実に経済成長がもたらされる。

今現在、株価が上昇しているもっとも重要な要因は、アメリカ経済に課せられる予定だったさらなる増税や規制がなければ「何が起きないか」を市場が知っていたからだ。現在、株式市場への参加者は、経済成長が実現することでもたらされる幸福の中にいる。