貿易政策がアメリカ経済を破壊するのか

一方、政権を担うトランプと共和党保守派の間には政策の違いも存在する。特に違いが顕著なのは、貿易政策に対する見解である。

トランプの、時に保護主義的な貿易に関する考え方は、自由貿易に賛成する伝統的な共和党とはまったく異なるものだ。トランプは、国際貿易を拡大させる自由貿易に関する合意について批判的であり、貿易合意はアメリカにとって不平等なものだと選挙中から言及してきた。私は共和党上院議員・下院議員が、我々のすべての貿易パートナーに対して貿易を拡大する戦いを続けることを望んでいる。

私がトランプの貿易政策に関する見解を心配するのは、それがアメリカの経済成長を破壊する懸念があるからだ。トランプはTPPを批判しているが、かつてはオバマもブッシュ政権におけるアメリカと韓国の貿易合意について批判してきた。しかし、オバマは大統領任期中に貿易合意の内容をある程度変更することで合意し、調印したという前例がある。これはただの私の希望だが、あのときのようにトランプも再交渉し、最終的にはアジアとアメリカ経済の統合が進展する機会が失われないことを望んでいる。

真にトランプが求めているのは、アメリカのさらなる経済成長と雇用の創出だ。それらは、現在オバマや民主党によってアメリカ経済に加えられているダメージを払拭し、減税政策や規制緩和などを行うことによって必ず達成することができる。特に、法人税と所得税が引き下げられることは、アメリカ経済を成長させるもっとも大きな助けになるだろう。経済政策が実行されていくプロセスのなかで、トランプも関税などの保護主義的な政策は目的達成のためにそれほど重要ではないと気が付くはずだ。我々がやるべきもっとも重要なことは、経済成長を加速させていくことなのだ。

(渡瀬裕哉=構成 玉川傑洋=協力 時事通信フォト=写真 大橋昭一=図版作成)
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