トランプ氏がアメリカの次期大統領に決まり、日本の株価は大幅に上昇。NYダウ平均株価も上昇を続けている。2017年もこの「トランプバブル」が続くのか。
写真=時事通信フォト

意外にもバランス重視のトランプ人事

トランプ氏によって政権閣僚人事が進んでいる。先日は、シルベスター・スタローン氏をNEA(全米芸術基金)の会長に任命したがっていると報じられ、スタローン氏が「就任の意思はない」と声明を発表する一幕もあった。選挙中に厳しく非難したウォール街や大手企業への偏重が目立つという声もあるが、実際のところはどうなのか。早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏は語る。

「たしかに、ウォール街からは経済閣僚として、国家経済会議(NEC)委員長にゴールドマン・サックス社長兼COOのゲーリー・コーン氏が、トランプ政権の『金庫番』である財務長官にはゴールドマン・サックス・元CIOのスティーブン・ムニューチン氏、商務長官には投資ファンドを経営するウィルバー・ロス氏が指名されています。さらに、インフラ投資に関連する閣僚として、大統領首席戦略担当兼上級顧問には『1兆ドルのインフラ投資を推進している男』を自称するスティーブン・バノン氏がいます。彼もまたゴールドマン・サックスの出身者。

ですが、トランプ政権の閣僚人事は、減税・規制緩和という共和党保守派の政策を強力に推進する目的でつくられたものです。ズラッと並んだ保守派閣僚の面々を見れば、アメリカ史上屈指の保守派政権が誕生したとわかるでしょう」

さらに、ラインス・プリーバス共和党全国委員会委員長を大統領首席補佐官に起用したり、元労働長官であるエレーン・チャオを運輸長官に起用したりするなど、最低限の党内バランスを意識した配慮もなされている。「何をするかわからない男」とトランプ氏を評価していた人にとっては、いささか意外な展開ではないだろうか。

しかし、アメリカ国民の評価は厳しい。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが16年12月8日に発表した世論調査によると、トランプ氏が進める新政権の閣僚などの人事への支持率は40%にとどまった。過去の政権移行期に行った同種の調査では、オバマ大統領71%、ブッシュ前大統領58%、クリントン元大統領64%という結果になり、トランプ人事への評価は歴代大統領と比べても低いのだ。