キャリアアップする、お金を増やす、家庭と仕事を両立させる、教養を高める。どうやったら「一段上」の自分になれるのか。達人たちのアドバイスを聞こう。

目的:教養を高める
●教えてくれる人:明治大学教授 鹿島 茂さん

100万人以上にのぼるシリア難民がEU域内へ流入したのは2015年のことである。EU諸国が難民問題で苦悶するなか、翌16年には国民投票によってイギリスのEU離脱が決まり、同じ文脈から、アメリカ大統領に孤立主義を掲げるトランプ氏が当選した。

明治大学教授 鹿島 茂●1949年、神奈川県横浜市生まれ。県立湘南高校から東京大学へ。同大学院博士課程修了。専門は19世紀フランス文学。サントリー学芸賞受賞の『馬車が買いたい!』をはじめ著書は100冊以上。

私たちはこれまでとは異なる「新しい時代」を生きている。ここ2年の出来事を目の当たりにして、誰もがそんな実感を抱いたのではないだろうか。

私は1995年頃から「本当の意味の21世紀は、15年頃に幕を開けるだろう」と繰り返し述べてきた。ある意味で、予言を当てたことになるだろう。

16世紀以降のフランスの歴史を見ると、世紀の変わり目を予感させる出来事が世紀末の85年頃から起きはじめ、やがて30年後の15年前後に決定的な事件が勃発する。そしてそれ以降、新しい時代が始まるというパターンがある。たとえば1789年にフランス革命が始まり、1815年にナポレオン戦争が終結したのが一番わかりやすい例だろう。のちに『パリ・世紀末パノラマ館』として単行本化する原稿を東京新聞に連載する際、フランスの歴史を調べていて気がついたことである。

この流れは欧米列強による植民地支配が進むにつれて、全世界的な歴史の法則になっていく。実質的な20世紀の始まりは、1914年の第一次世界大戦勃発からだ。それでは、21世紀はどのように訪れるのか?

85年にはゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任して政治・経済の大改革に乗り出し、同じ年、自由主義陣営では「プラザ合意」が成立してその後の世界経済のあり方を大きく変えた。フランスの極右政党・国民戦線が躍進したのは翌86年の国民議会選挙である。中国が改革開放路線で猛烈な経済成長を始めるのもこの頃だ。

予兆は出揃った。すると2015年頃に何かが起きて、20世紀とは隔絶した21世紀という新しい時代がやってくるだろう。私はそう考えたのだ。

歴史のなかに法則を見出し、未来を予測するために必要なのは、大ざっぱに言えば「教養の力」である。読むべき本を列挙してみると、最初に来るのは世界史と日本史の教科書だろう。高校の標準的な歴史教科書である山川出版社の教科書を用意しよう。

といっても、教科書の歴史解釈をそのまま信じ込んではダメである。教科書の記述では、たしかにわかりやすい因果が示されている。ただ、詳しく調べると「そんなに単純なものではない」こともわかってくるのだ。