キャリアアップする、お金を増やす、家庭と仕事を両立させる、教養を高める。どうやったら「一段上」の自分になれるのか。達人たちのアドバイスを聞こう。

目的:キャリアを築く
●教えてくれる人:カルビー 上級執行役員 鎌田由美子さん

JR東日本ではエキナカ施設の「エキュート」を立ち上げたあと、青森駅前のA-FACTORYをはじめとする地域活性化プロジェクトに携わりました。2015年からは、畑違いのカルビーに転じて、役員として事業開発を任されています。友人からは「日の当たる道を歩いているね」といわれることもありますが、要領よくキャリアを築いてきたわけではありません。子供の頃から要領は悪いほうでした。

カルビー 上級執行役員 鎌田由美子●1989年、東日本旅客鉄道入社。2005~08年、「エキュート」の運営子会社社長。本社事業創造本部部長、研究開発センター副所長を経て、15年2月より現職。著書に『ecute物語 私たちのエキナカプロジェクト』がある。

大人になっても相変わらずで、最初の「エキュート」を大宮駅につくったときも、プロジェクトのリーダーを任されたのに、何をすればいいかまったくわからなかった。それで最初の3日間、朝の始発から夜中の終電まで、大宮駅で駅を通り過ぎる人の後をただひたすらついて回って何を買うかを見ていました。コンコースは空調もされてなく、吹きさらしの風が冷たくて、使い切りカイロを何枚貼っても足りなくて、夜中の2時にホテルに戻ると体中ガチガチに凝っていました。

私はなんでこんなことしているんだろうって思ったりすることもありましたが、そういうことを続けているうちにわかってきたことがあります。

たとえば、女性が立ち食いソバを利用しないのはお蕎麦が嫌いなわけじゃなくて、あそこで自分が食べているのを見られるのが嫌なんですね。だったら女性が5分で温かい食事のできる場所をつくろうとか。もちろん私だけじゃなくて、プロジェクトに関わった部下たちと延々そういう話を繰り返して、ようやくあの場所、「エキュート大宮」は生まれました。

何をするにも時間をかけて自分で経験して、人の3倍は考えないと答えが出せないんです。しかし40歳を過ぎた頃、それでもいいと思えるようになりました。要領が悪いからこそ、上手くいく仕事もあると理解したのです。

ただし、それを貫くには、捨てることを学ばなければいけません。