やりたい仕事が貰えて、初めて仕事が好きになり、やり甲斐が生まれる。一流になれば、格好の良い仕事で、毎日楽しく働ける──若い人はそう考えがちですが、それはまったくの誤解です。

どのような一流のプロフェッショナルも、仕事の9割は地味で単調な作業の連続です。「神は細部に宿る」といいますが、その神をつかまえるには、目に見えない単調な作業の積み重ねが必要。それがあって初めて、目に見える成果が生まれるのです。

そして、こうした地味な作業に取り組む姿勢こそが、やりたい仕事を呼び込むための鍵。私の経験では、地味な仕事を「面白い」「やり甲斐がある」と思って取り組んでいると、逆にやりたい仕事が、ごく自然に集まってくるのです。

私はこれを「仕事の逆説」と呼んでいますが、「それは科学的に実証されているのか」などと疑問を持つのは、若さの落とし穴。人生には、論理を超えた世界がある。無条件に覚悟を決めることも、ビジネスの世界では大切です。まず、「この仕事は面白い」と思ってみてください。実は、一流のビジネスパーソンは、退屈に思える仕事を「やり甲斐のある仕事」にする心得を身につけています。

それは次の「3つの心得」です。

第1は、仕事を「研究」すること。例えばホチキス1つでも、どう打てば資料が読みやすく扱いやすいかを考える。そうした探究心を持っていれば、どんな些細な仕事でも興味が湧いてきます。そして、探究心を持って仕事に取り組んでいると、自然に、深く考える力、広く見つめる力、先を読む力、人の心を読む力、場の空気を感じ取る力が養われ、そうした力は、将来、重要な仕事に取り組むとき、必ず役に立ちます。

第2は、仕事の「意味」を考えること。仕事の目的だけでなく、意味を考える。なぜいま、この仕事が自分に与えられたのか、この仕事は、何を学べということなのか、その意味を深く考えるのです。その能力を、私は「解釈力」と呼んでいます。そして、人生は、この「解釈力」によって道が分かれる。起こった出来事を、前向きに解釈できるか否かの勝負です。