収納スペースに1000万円もかけるべきか?

普段のアドバイスでは500万円とか1000万円という金額は人生を左右する額であると伝えている。つまり住宅の予算はその人の人生に影響する、ということだ。

もちろん、予算は低い方が住宅のローンの返済がラクであることはわざわざ説明するまでもないが、予算を下げれば通勤時間が伸びる、駅から遠くなる、部屋が狭くなる、など何かしらのデメリットを受け入れる必要がある。市場経済の世界ではトレードオフの原則(あちらを立てればこちらが立たず)から逃げようがないからだ。

ではお金の世界から少しだけ離れてこの問題を解決する方法は無いのか考えてみたい。つまり希望の場所に無理のない予算で家を買う方法だ。それが実は「モノを減らす」という一見すると簡単な方法だ。

住宅における押し入れやクローゼット等の収納スペースは、概ね1割程度が目安とされている(間取りや、一軒家とマンションでも異なるのであくまで目安)。つまり60~80平方メートルのマンションならば6~8平方メートルとかなりの広さが収納に使われる。タンスやラック、テレビ台、本棚などのスペースも含めれば、さらに多くのスペースが使われている事になる。

これらのスペースを大幅に減らすことができれば、つまり収納が不要だからもっと小さいマンションで十分という判断が出来るようになれば、予算を大幅に減らすことが出来る。人気地区で10平米狭い部屋にすれば、予算を1000万円下げる事が可能になる。

もう何年も前になるが、相談者の方から「中嶋さんのアドバイスはこんまり先生の話と似ている」と指摘された。その時に初めてしったが、こんまり先生こと近藤麻理恵さんは、著書が100万部を超えるベストセラー作家でもある有名な片付けコンサルタントだ。その前年には断捨離も話題になっていたが、今も続くミニマリスト(極限までモノを減らす暮らしを実践する人のこと)のブームの下地にはなっていたのではないかと思う。

相談者から指摘された「似ている」という箇所は、お金は手段にすぎず、楽しい生活を送るために家計や住宅や保険の事を考えるべき、という部分だ。近藤さんの著書はタイトルにある通り、ときめく生活、つまり楽しい生活を送るために片付けをしましょう、という内容だ。断捨離やミニマリストも同じく「モノと生き方」の関係を説いたもので、自分が「お金と生き方」の関係を力説していることかぶって聞こえたのかもしれない。