「経営学」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。学生の頃にマイケル・ポーターの『競争の戦略』を学んだことを懐かしむ人もいるかもしれません。

入山章栄氏●1996年慶應義塾大学卒業、98年同大学院修士課程修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院博士号取得。13年より早稲田大学ビジネススクール准教授。

現在のビジネススクールで学ぶことができる経営学は、どのようなものか。実は、MBAなどの教育の現場で用いられる経営戦略論の教科書では、いまだにポーターの知見が大きなウエートを占めています。教科書はどれも同じような内容で、20~30年中身があまり更新されていないのです。

とはいえ、経営学者は、日々経営学を科学的に、理論や統計解析を使って研究し、最新の成果を発表し続けています。ただ彼らが競っているのは、学術論文がどれだけ専門の学術誌に掲載されるかということで、MBAの教科書に理論やコンセプトを紹介することは業績になりません。

そこで、最新の成果の中で、ビジネス上示唆に富むものを、紹介していきましょう。

あなたの会社はどのタイプか

多くのビジネスパーソンが、自社の戦略に悩み、「競争戦略」のフレームワークを勉強しています。しかし、競争戦略を学ぶ日本人の多くに欠けている視点があります。それは企業の「戦略」には、それぞれに通用する範囲があるということです。

競争戦略で以前からよく使われるのが「ポーターの競争戦略」(SCP戦略)です。代表的なフレームワークが、「ポジショニング」です。業界内のライバルと比べて自社はどのような製品・サービスを顧客に提供するか――このポジショニングはおおまかに2種類に分かれます。差別化した製品・サービスで価値を提供する「差別化戦略」と、他社よりも低コスト・低価格でシェアを取る「コストリーダーシップ戦略」です。

ポーターの競争戦略に対比して使われるのが、これまた有名な「リソース・ベースト・ビュー(RBV)」です。これは、ジェイ・バーニーが中心となり打ち出された「競争優位に重要なのはポジショニングよりも、企業の持つ経営資源=リソースである」とする考えです。

リソースのわかりやすい例には、人材・技術・ブランドなどがあります。