一般に日本では「この2つの戦略のフレームワークのどちらが有用か」を比較する傾向があるようです。しかし経営学の知見によれば、「どちらが重要かは、事業環境によって変わる」と考えるべきです。先出のバーニーは次の3つに事業環境を分けています。

・IO型:業界構造が比較的安定しており、その構造要因が企業の収益性に大きく影響する業界(例:日本のビール業界)

・チェンバレン型:複数の企業がある程度差別化しながら、それなりに激しく競争する業界(例:日本の自動車メーカー)

・シュンペーター型:技術革新の変化などが速く、競争環境が極端に不確実な業界(例:IT業界)

これらの異なる事業環境に対応して、それぞれ必要な戦略の視点を変える必要があるのです。

たとえば、「IO型」の競争環境では、比較的安定した業界構造の中で差別化や低価格化で争う「ポーターの競争戦略」が検討されるべきです。

また、複数の企業が緩やかに差別化しながら競争する「チェンバレン型」では、差別化の源泉である技術力や人材を磨く必要があります。すなわちRBVの視点です。かつての日本企業の製造業はこの型が多かった、というのが私の理解です。実際、自動車メーカーはいまでも国内に11社もあって、各社が技術力や人材を磨いてきたわけです。

これらに対して、参入障壁がかなり低く競争が激しく、技術変化なども激しいシュンペーター型では、不確実な状況の中で新しいビジネスを次々生み出し、上ブレの利益を狙う「リアル・オプション戦略」が求められます。

強い企業は、競争の型の違いに基づいて、メリハリのある戦略をとっています。たとえばGoogleは世界で最もイノベーティブな企業の一つとして知られており、シュンペーター型に該当すると誰もが考えます。ですが、彼らの真の強みは、検索サービスをほぼ独占しているということ。収益の9割は広告から得ている。つまり、安定したIO型のビジネスで得た膨大な利益を、AIやウェアラブル端末などの最先端のイノベーティブな(シュンペーター型の)ビジネスに投資しているのです。

ほかに興味深いのが、近年業績が回復してきたSONYです。同社が現在大きな収益源としているのは金融事業です。IO型に近い金融部門で、「ポーターの競争戦略」を採用して得た利益を、シュンペーター型のビジネスへ投資しています。

このように、競争の型の変化に伴い、競争戦略を変化させるという視点が必要なのです。

(伊藤達也=構成 奥谷 仁、的野弘路=撮影)
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