創業者の子どもは娘のほうがいい?

同族経営というと、2011年には大王製紙事件、昨年には大塚家具でお家騒動が起こるなど、日本ではウエットな面ばかりが報じられ、ネガティブな印象がつきまといます。ですが、最先端の経営学では、「同族経営」のほうが、非同族企業よりむしろ業績が高くなる可能性が指摘されているのです。

同族経営は、日本だけに限らず世界的にもスタンダードな経営形態です。アメリカの雇用の6割以上が同族経営によるものと言われています。そして重要なのが、同族企業の業績が非同族企業よりも優れているという研究結果が多数発表されているということです。米アメリカン大学のロナルド・アンダーソン教授が03年に発表した統計分析の結果では、同族企業のほうが非同族企業よりも総資産利益率が高いことが示されました。さらに、蘭エラスムス大学のマルク・ファン・エッセンが15年に発表した論文でも、過去の55本の実証研究をまとめた結果、「アメリカの上場企業では、同族企業のほうが非同族企業より業績がよい」という結論を得ています。

同族企業の業績がいい理由について、解説していきましょう。ひとつは、長期的な視点がとれることです。3~4年周期で社長が代わってしまう会社では、目先の儲けしか考えられない。しかし同族企業の場合は、20~30年後を見据えてビジネスをする。なぜかといえば、自分の子供に会社を引き継ぐときのことを想定するからです。目先の利益にはならないけれど、将来的に有効かもしれない技術にも投資できるわけです。

3年任期の社長だと、早く収益を出さないと株主から突き上げられますし、ヘタすると一期で退任なんてことになりかねません。

同族経営の好例が、ロート製薬です。同社の山田邦雄会長は、前身の「信天堂 山田安民薬房」からの一族経営者。もともと目薬で有名な会社ですが、「肌ラボ」という新しい化粧品の対面販売にチャレンジして、大成功しました。挑戦には失敗もつきものですが、「知の探索」を繰り返すことが、会社にプラスになっています。