日本電産 永守重信社長(写真=gettyimages/Bloomberg)

真のリーダーのあるべき姿とは?

「君たちは経営者ではなく、経営管理者だ」「経営者と経営管理者は違うぞ」

永守重信社長はグループ会社の社長たちを前にして、よくこう指摘していました。

では、経営者と経営管理者は、どう違うのか。私流に表現すれば、経営者はリスクを恐れずに即断即決で意思決定し、場合によっては企業全体の方向を大きく変えることも厭わない人。これに対して、経営管理者は、事業がリスクに陥らないように用心し、コースどおりの事業運営を心がける人でしょうか。前者が荒野をも走る人に対して、後者はレールの上を走る人と表現してもいいと思います。

そう考えると、日本では過去何十年間か、世の中の「経営者」の多くが、「経営管理者」になっていたのではないでしょうか。特筆すべき何人かのトップを除いて。永守社長がこの言葉をグループ会社の社長たちに向かってよく口にしたのは、次のように見抜いていたからでしょう。

経営者として1つの会社を引っ張る、特に赤字企業の再建に取り組むということは、まったく新しいものを生み出すようなものです。大企業の各部門のトップにありがちな、決められた役割の中で歯車の1つとして動いていれば済むというのとは、まったく違います。

一方、中小企業では、小なりといえども社長となれば全社を背負う存在です。たった1人で、どんな試練にも強い覚悟をもって臨み、絶対に逃げないという姿勢が求められる。つまり、経営者と経営管理者の違いは、リスクに直面したときに、どう向き合うか。そこが分岐点となるのだ、と。

いま振り返ると、永守社長は「経営者」と「経営管理者」の違いを説いて、真のリーダーはどうあるべきかを、グループ会社の各社長に伝えていたのだと思います。