日本電産 永守重信社長(写真=gettyimages/Bloomberg)

日本電産が行う、赤字企業再建とは?

日本電産は、「失われた20年」と呼ばれる低迷期の日本にあって、稀有な急成長を遂げてきた企業です。いまや売上高1兆円を突破(2015年3月期)。パソコンのハードディスクに内蔵される精密小型モーターの分野で、80%超のシェアを誇る「世界一」企業です。

同社発展の因は、まず第一に創業者でもある永守重信社長の、きわめて強烈なリーダーシップにあります。永守流と呼ぶべき、独特にして深みのある個性的経営者ぶりに、です。

その個性から生み出された経営手法の具体的な1つが「M&A」。同社の経営手法の鍵とも言えるものです。赤字のモーター会社を次々と買収して、1~2年という短期間で再建を果たし、黒字企業に転換してグループ全体の売上高、業界シェアを拡大していく。

M&A の対象となる会社は、仮に大企業の関連会社であっても、メインバンクも匙を投げ不採算部門として売りに出されるような赤字企業ですから、社内は慢性未達病にどっぷりと浸かって活気がなく、負け戦慣れして、社員も下を向いて仕事をしている状態です。

そこに、永守社長から指令された再建のための厳しい経営方針を背負って、私のような再建担当の役員が、たった1人で乗り込む。日本電産本社から派遣された“代官役”としてです。そして、社員の意識を改革し、職場の空気を一変させ、仕事の進め方を変革し、業績の上がる企業に短期間で変貌させるのです。