ビジネスでも、零細の取引先や部下の隠し事・ごまかしに薄々でも気がつくと、有能で頭の切れる人ほど即座に追及したがります。が、いきなり痛いところを突かれたら、相手は核心部分に触れることすらなく心を閉ざします。そうなったら終わり。下が上を、ではなく、まず上が下を信頼する。それが、下に「この人になら何でも話せる」と思わせる関係を築く第一歩です。

一般的な例として、2つのケースを想定してみましょう。

ケース(1)何ごとか問題があり、相手に相談したいが言い出せない。
ケース(2)自分(または自社)に不利なことなので、隠し通そうとする。

(1)では往々にして、普段と違うところが態度に表れます。どこかおどおどして目を合わそうとしないとか、特定の話題について無関心を装うなど。人によって様々ですが、何かしらの兆候があるものです。

しかし、そこで焦らず、相手が自分のタイミングで話そうとするまで待ちましょう。「どうかしたの?」とか「何か心配事でもあるの?」と、それとなく問いかけてみるのもいいでしょう。相手は「話したい」のですから「この人は自分を気にかけている」と思えれば、いずれは自分から「実は……」と話し出すはずです。

このとき気をつけるのは、相手が話そうと思ったまさにそのときに、話を聞いてあげることです。「今は時間がない」「後でゆっくり」などとこちらの都合で間を置くと、相手はまた逡巡してしまいます。タイミングを逃さず捉えることが大事です。

(2)は、警察の取り調べでいえば、被疑者が黙秘、あるいは否認しているのと近い状況です。しかし、この場合、当人がひた隠しにしてもその周辺を見ていくと、大なり小なりの問題がすでに起こっているはずです。

するとまたぞろ「何が起きている」「どうしてそうなった」と追及しがちですが、それは逆効果。相手は「隠したい」わけですから、たいていの場合、自分の不利益が最小限になるようにします。つまり、肝心なことはしゃべらないのです。